
今年からリーグ編成が変更となり、関東連盟に所属する大学3チーム、クラブ8チームの合計11チームによって争われたジャイアンツ杯争奪ヴィーナスリーグはエイジェックが連覇を達成。
各チーム10試合と昨年と比べても試合数が増加した2022年のヴィーナスリーグを記録で振り返っていきます。
第三弾は個人投手成績編。最多投球回・最優秀防御率・最多勝・最多奪三振・最優秀奪三振率・最優秀WHIP・最優秀K/BBの計7部門を紹介していきます。
規定投球回は試合数×1.5(試合数は不戦勝・不戦敗を除く)とし、計17選手を集計の対象としました。
[規定投球回]
12回:エイジェック・埼玉西武LL・日大国際
13.5回:尚美学園大学・平成国際大学・ハナマウイ・GOODJOB/バンディッツ
15回:アサヒトラスト・ZENKO BEAMS・侍・ゴールドジム
※本記事上の記録はmegaphone独自の集計です。
最多投球回
順位 | 選手名 | 所属チーム | 回数 |
1 | 鈴木 ちなみ | アサヒトラスト | 50 1/3 |
2 | 亀谷 なる実 | 侍 | 47 |
3 | 田中 露朝 | ZENKO BEAMS | 39 |
4 | 花ヶ崎 衣利 | ハナマウイ | 36 2/3 |
5 | 半田 莉子 | 尚美学園大学 | 30 2/3 |
6 | 望月 音羽 | 尚美学園大学 | 27 1/3 |
最多投球回はアサヒトラストの鈴木ちなみ投手。鈴木投手は全試合となる10試合に登板し5完投。昨年も投球回部門3位にランクインした鈴木投手は、今季はチーム全体の8割近くとなる50回1/3を投球し、2年連続でチームを支えています。
2位以下には侍の亀谷なる実投手(昨年投球回1位)、ZENKO BEAMSの田中露朝投手(昨年投球回4位)がランクイン。投球回はチーム事情や日程等の要素にも左右されるものの、年間を通して10試合を戦い抜く必要があるヴィーナスリーグで、毎年安定して多くのイニングを投げるということは簡単なことではなく、投手として重要な能力の一つだと思われます。

最優秀防御率
順位 | 選手名 | 所属チーム | 回数 | 自責 | 防御率 |
1 | 清水 美佑 | 埼玉西武LL | 21 | 3 | 1.00 |
1 | 篠原 花奈 | 平成国際大学 | 21 | 3 | 1.00 |
3 | 小松 圭保 | エイジェック | 12 | 2 | 1.17 |
4 | 里 綾実 | 埼玉西武LL | 12 2/3 | 3 | 1.66 |
5 | 山田 優理 | 埼玉西武LL | 16 1/3 | 4 | 1.71 |
6 | 竹村 理 | エイジェック | 20 | 5 | 1.75 |
7 | 田中 露朝 | ZENKO BEAMS | 39 | 11 | 1.97 |
最優秀防御率は21イニングを投げ自責点3に抑えた、埼玉西武LLの清水美佑投手と平成国際大学の篠原花奈投手。埼玉西武LLはチーム防御率1.50(2位)、平成国際大学は1.63(3位)と投手力の高さが目立った両チーム。清水投手と篠原投手はその中心として、それぞれチーム内最多投球回を記録しています。
今季のヴィーナスリーグでは7投手が防御率1点台の好成績を残しています。3位以下には優勝のエイジェックから小松圭保投手と竹村理投手、準優勝の埼玉西武LLからは里綾実投手と山田優理投手がランクイン。打撃部門では3位の尚美学園大学の選手が多くランクインしていた一方で、上位2チームの投手力の高さが窺えます。

最多勝
順位 | 選手名 | 所属チーム | 回数 | 勝利 |
1 | 半田 莉子 | 尚美学園大学 | 30 2/3 | 4 |
2 | 田中 露朝 | ZENKO BEAMS | 39 | 3 |
2 | 鈴木 ちなみ | アサヒトラスト | 50 1/3 | 3 |
2 | 望月 音羽 | 尚美学園大学 | 27 1/3 | 3 |
2 | 篠原 花奈 | 平成国際大学 | 21 | 3 |
本記事における勝利は、先発・救援の区別無くチームが最終的な勝ち越し点を挙げた当時に投球していた投手を勝利投手とする方法を採用しました(NPBオープン戦・オールスターゲームと同様の方式)。
最多勝は4勝をあげた尚美学園大学の半田莉子投手。今季7勝で3位という好成績を残した尚美学園大学は半田投手と望月音羽投手の2投手で戦い抜き、両投手とも勝利部門でランクインしています。2位には20イニング以上を投げ、3勝をあげた4投手がランクインしています。
最多奪三振
順位 | 選手名 | 所属チーム | 回数 | 三振 |
1 | 田中 露朝 | ZENKO BEAMS | 39 | 35 |
2 | 鈴木 ちなみ | アサヒトラスト | 50 1/3 | 24 |
3 | 清水 美佑 | 埼玉西武LL | 21 | 19 |
3 | 竹村 理 | エイジェック | 20 | 19 |
5 | 花ヶ崎 衣利 | ハナマウイ | 36 2/3 | 17 |
5 | 半田 莉子 | 尚美学園大学 | 30 2/3 | 17 |
7 | 亀谷 なる実 | 侍 | 47 | 16 |
最多奪三振はZENKO BEAMSの田中露朝投手。田中投手は39イニング(3位)を投げ、2位以下に10以上の差をつける35奪三振。昨年実施の「女子野球選手100人アンケート」変化球部門では1位に輝いたキレのあるスライダーで三振を量産。昨年に続いて2年連続でヴィーナスリーグ最多奪三振を記録しています。
2位にはアサヒトラストの鈴木ちなみ投手がランクイン。鈴木投手は投球回部門1位となる50回1/3に登板し、24奪三振を記録しています。3位以下にも女子野球界を代表するレベルの好投手がランクイン。女子野球では比較的三振が少ないだけに、『三振が取れる』投手の魅力は高くなります。

最高奪三振率(K/7)
順位 | 選手名 | 所属チーム | 回数 | 三振 | K/7 |
1 | 竹村 理 | エイジェック | 20 | 19 | 6.65 |
2 | 清水 美佑 | 埼玉西武LL | 21 | 19 | 6.33 |
3 | 田中 露朝 | ZENKO BEAMS | 39 | 35 | 6.28 |
4 | 山田 優理 | 埼玉西武LL | 16 1/3 | 13 | 5.57 |
5 | 小松 圭保 | エイジェック | 12 | 9 | 5.25 |
6 | 半田 莉子 | 尚美学園大学 | 30 2/3 | 17 | 3.88 |
7 | 鈴木 ちなみ | アサヒトラスト | 50 1/3 | 24 | 3.34 |
1試合(7イニング)あたりの奪三振数を表す奪三振率(K/7)はエイジェックの竹村理投手が1位に。昨年も少ないイニングながらK/BB 7.00を記録した竹村投手は、今季はチーム最多となる20イニングに登板し、K/BB 6.65を記録。1イニング1奪三振に迫るペースで三振を奪っています。
2位・3位には僅差で埼玉西武LLの清水美佑投手、ZENKO BEAMSの田中露朝投手がランクイン。ヴィーナスリーグ以外でも各大会で活躍し、観戦している中でも三振を奪う場面をよく目にする両投手ですが、数値面でも奪三振能力の高さが現れています。

最優秀WHIP
順位 | 選手名 | 所属チーム | 回数 | WHIP |
1 | 篠原 花奈 | 平成国際大学 | 21 | 0.95 |
2 | 小松 圭保 | エイジェック | 12 | 1.00 |
3 | 山田 優理 | 埼玉西武LL | 16 1/3 | 1.04 |
4 | 水野 志歩 | 日大国際 | 13 2/3 | 1.10 |
5 | 泰 美勝 | ZENKO BEAMS | 19 | 1.11 |
5 | 鈴木 ちなみ | アサヒトラスト | 50 1/3 | 1.11 |
1イニングあたりに出塁を許した走者の数を表すWHIPは平成国際大学の篠原花奈投手が1位に。防御率部門でも1位となった篠原投手は、集計選手中では唯一となるWHIP 0点台を記録。ランナーを出すことすら許さない好投で投手部門二冠を達成しています。

最優秀K/BB
順位 | 選手名 | 所属チーム | K/7 | BB/7 | K/BB |
1 | 小松 圭保 | エイジェック | 5.25 | 1.17 | 4.50 |
1 | 泰 美勝 | ZENKO BEAMS | 3.32 | 0.74 | 4.50 |
3 | 竹村 理 | エイジェック | 6.65 | 2.10 | 3.17 |
4 | 山田 優理 | 埼玉西武LL | 5.57 | 2.14 | 2.60 |
5 | 田中 露朝 | ZENKO BEAMS | 6.28 | 2.87 | 2.19 |
6 | 清水 美佑 | 埼玉西武LL | 6.33 | 3.00 | 2.11 |
奪三振と与四球の比率を表すK/BBはエイジェックの小松圭保投手とZENKO BEAMSの泰美勝投手が1位に。三振と四球は野手の影響を受けないプレーのため、純粋な投手能力を測る指標の一つとしてK/BBは扱われています。
小松投手はK/7部門でも5位にランクインする好成績を残すと、BB/7でも全体2位の1.17を記録。一方の泰投手はK/7では小松投手には劣るものの、BB/7では0.74という圧倒的な記録で1位に。“ほとんど四球を出さない”両投手がK/BB 4.50という好成績を残しています。

ヴィーナスリーグ個人投手成績編、いかがでしたでしょうか?
優勝のエイジェックや準優勝の埼玉西武LLの投手が多くランクインする結果となりました。この成績を見ると、『野球は投手』と言われていることが納得できます。
全3編でヴィーナスリーグの成績を振り返った本企画。クラブ選手権や全日本選手権でも同様の企画を行いましたが、各チーム10試合と多く、対戦相手も平等になるヴィーナスリーグの方がより正確なデータを取ることができたことだと思われます。megaphoneでは引き続き、女子野球の成績や記録をまとめていきたいと思います。