女子野球選手100人アンケート2022 強肩部門1位 埼玉西武ライオンズ・レディース 英 菜々子

「女子野球選手100人アンケート2022」として、「直球」「コントロール」「変化球」「長打力」「バットコントロール」「走塁」「守備」「強肩」の計8部門で現役女子野球選手100人にアンケート調査を行いました。

各部門で1位を獲得した女子野球界トップレベルの9選手(強肩部門は同率で2名が1位)に今シーズンを振り返っていただきます

本記事では強肩部門で同率1位の票を獲得した埼玉西武ライオンズ・レディースの英菜々子選手にお話を聞かせていただきました。

【英菜々子(はなぶさななこ)】
1997年10月23日生まれ。東京都出身。

[経歴]
駒沢学園女子高校
日本大学国際関係学部
埼玉西武ライオンズ・レディース(2020-)

[日本代表歴]
2022年 第3回女子野球アジア杯(最終候補/開催時期未定)

「焦らず、欲を出さないことが1番」埼玉西武LLの正捕手の二塁送球での意識

小石
まずは、強肩部門1位に選ばれた感想をお願いします。
英選手
女子野球をやっている方に選ばれたということが嬉しいです。5位からスクロールしながら記事を見ていて、1位に自分の名前があってびっくりしました。今は治ってきたのですが、怪我をしていた時期もあり、思うようにできずに悩んでいたので純粋に嬉しかったですね。
小石
強肩部門1位ということですが、遠投はどのくらいですか?
英選手
80mくらいです。
小石
怪我というのはいつ頃の話だったのですか?
英選手
大学卒業してライオンズレディースに入ってから今までの間くらいまでは怪我に悩まされていました。
小石
試合にも出場しながら怪我を治していくのは大変だったと思いますが、どの様な方法で治していったのですか?
英選手
ライオンズ・レディースでは全体練習は毎日はありませんが、チューブトレーニングを毎日続けるようにしていました。それからは怪我も治り、送球の安定性や肩の位置の安定性も保ててきたので、どんなに忙しい時でもチューブトレーニングだけは続けています。
小石
なるほど。チューブトレーニングが効果的だったのですね。
英選手
そうですね。ただ、チューブトレーニングを始めてから結果に結びつくまでは凄く時間がかかりました。嫌になることもやめようと思うこともあったのですが、半年から1年くらい続けていると効果が目に見えてわかるようになってきました。
小石
具体的にはどういった実感があったのですか?
英選手
キャッチボールや送球で肩の痛みがなくなったり、自分のイメージ通りのポイントでボールが離せてる割合が増えているなと。
小石
キャッチャーの送球で特に意識していることは何ですか?
英選手
まずは取ってから握りかえるまでを焦らないことが1番だと思っています。セカンド送球では低い弾道で投げようと欲が出てしまうとショートバウンドになってしまったり、タッチがしにくいボールになってしまうことが多いので、セカンドベースを狙わずにピッチャーのちょうど頭の上を狙うようにしています
小石
練習の面ではいかがですか?
英選手
最近ではキャッチボールで全球胸に投げる意識でやっています。これは野球を始めてからずっと言われている当たり前のことだとは思うのですが、それをちゃんと意識していないとやり続けることは難しいと思います。
小石
キャッチボールではどのくらいの距離で投げることが多いのですか?
英選手
塁間のちょっと奥くらい、キャッチャーとセカンドの間の距離よりも少し短いくらいです。遠投だと『遠くに投げよう』という意識になるので、この距離で低い球を胸に投げようと常に意識しています。

「現役選手として女子野球の変化を楽しんでいきたい」新たな取り組みも多かった今年の女子野球を振り返って

小石
埼玉西武LLとして3年目のシーズン。今年1年間はどの様なシーズンでしたか?
英選手
チームとしては優勝ができずに悔しい1年でしたが、優勝できない中でも“どこで終わるか”ということは去年よりは上がったと思います。
小石
英選手個人としてはどうでしたか?
英選手
個人的には肩が治ったので、送球のストレスはなく1年を過ごせました。バッティングの面ではクリーンナップを任されることが多かったので、もっと打点をあげたり、得点圏打率をあげられれば良かったなと思います。特にライオンズはピッチャー陣が良かったので、1回のチャンスを確実に活かせれば勝つこともできたのかなと。
小石
今年は日本代表合宿にも参加されたりしていましたが、チーム外の活動で学んだことは何かありましたか?
英選手
バッティングで私は“待つ”タイプだったのですが、代表合宿が終わってからは初球にも手を出す様に心がけています。きちんとイメージしていれば初球でもヒットは出ますし、チャンスではその1球が大事になってくるので。
小石
女子野球界全体を見ると、今年はどういった1年でしたか?
英選手
本当に女子野球の裾野からの発展というか、近年盛り上がっているなということをすごく感じました。
小石
ここ何年かで一気に高校も増えたり、本当に盛り上がっていますね。
英選手
そうですね。ちょうど発展し始めてからの高校生たちとはまだ触れ合う機会も少ないので、そういう経験をしてきた高校生たちと一緒にプレーすることは楽しみですね。私は中学から女子野球をやっていますが、年々変わっていく女子野球界を現役選手として変化を楽しみたいなと思っています。
小石
現役はあとどのくらい続けるのですか?
英選手
身体的にはまだまだできると思っていますが、自分の人生設計を考えるとそこまで長くはないのかなと考えています。中学・高校・大学でもそうでしたが、『好きな野球だけを続けない』ということをモットーにやってきたので、社会人でもその軸は変えないようにしようと思っています。

「入れ替わったメンバーで新しい挑戦を」4年目となる埼玉西武LLの2023年シーズン

小石
チームとしてはメンバーの入れ替わりもありますが、その点はいかがでしょうか?
英選手
今シーズン最後の方の試合は新メンバーで臨んでいて、高卒の若い選手たちも積極的に新谷監督の野球理論を学ぼうとしています。シーズンが始まるまでにしっかりとチームとして固めて、また新しい挑戦をしていければいいなと思います。私自身は上の世代と下の世代をつなぐ役割をしていきたいです。
小石
今年よく投げていたピッチャーの退団も目立ちますが、キャッチャーとしてはどう感じてますか?
英選手
そうですね。ピッチャーの層が変われば私たち自身の戦い方も変わってくるので、しっかりと考えていけば問題はないのかなと。キャッチャーとしてはずっと最小失点で抑えることを考えてきたのでそこは変えずに、バッティングの面で何か変えていければいいのかなと思っています。ライオンズは基本的には守備のチームなのですが、バッティングの方でみんなで工夫してやっていければいいかなと思います。
小石
中間の世代としての役割や攻守において要となる英選手がやはり来年のポイントにはなりますね。
英選手
そう思いながら、自分自身に自覚とプレッシャーを与えて練習に取り組んでいます。ただ頼りになる先輩方や色々と話せる後輩もチームにはいるので、色々なことを頼りながら来年もやっていきたいです。
小石
来シーズン、チームとしての目標をお願いします。
英選手
創設年のクラブ選手権以降は優勝していないので、まずは全国大会での優勝が目標です。毎日は練習ができない中で、個人の意識で補い切れるところと補いきれないところがあるので、『優勝するためにはどうしたらいいか』をみんなで考えてやっていきたいと思います。
小石
それでは最後に、英選手個人としての来シーズンの目標を教えてください!!
英選手
来年はどういう打順を任されるかはわかりませんが、打点と得点圏打率を高くしたいです。単純な打率ではリーグ戦や各種大会全部合わせて3割以上を目標としたいです。守備では送球の安定性・正確性を意識しているので、盗塁を刺すことや盗塁企図数の少なさという点でピッチャーに貢献したいです。ストップ数も意識しているので、目標は高く“捕逸0”も目指します。

NPB公認チームのパイオニアとして来年4年目のシーズンを迎える埼玉西武ライオンズ・レディース。大きくメンバーも入れ替わる中で、攻守の要として1年目からチームを支え続けてきた英選手には来季更なる活躍が期待されます。

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