
全国の女子硬式野球チームが女子野球の聖地・松山に集い、エイジェックとIPU環太平洋大学の2チーム優勝で幕を閉じた第17回全日本女子硬式野球選手権大会。
大会2日目に当たる8月8日、全く異なる舞台で1人の女子選手が活躍していました。
静岡県の浜松球場で行われた静岡県知事杯社会人・大学野球対抗戦。大会3連覇を狙う強豪企業チームのヤマハ相手にクラブチームの静岡硬式野球倶楽部が勝利し初優勝。
この試合で7回表2死無走者からワンポイントで登板した新村未来投手が勝利投手となりました。

【新村未来(しんむらみく)】2001年11月6日生まれ。静岡県出身。
兄の影響で小学校4年生から野球を始めた新村さんは、2期生として岐阜第一高校女子硬式野球部に入部。2年秋にはキャプテンとして全国準優勝にチームを導く。常葉大学に進学後の現在は社会人クラブチーム「静岡硬式野球倶楽部」に所属し、静岡県知事杯社会人・大学野球対抗戦決勝で強豪企業チームのヤマハ相手に勝利投手となった。
今回はヤマハ戦で勝利投手となった新村未来選手にインタビューを行いました。
Contents
静岡県の社会人野球でクラブチームが企業チーム相手に勝利 勝利投手は女子選手

小石
先日のヤマハ戦は社会人公式戦初勝利ですか?

新村選手
そうですね。
公式戦の出場は2回目で、勝利投手となったのは初めてでした。
公式戦の出場は2回目で、勝利投手となったのは初めてでした。

小石
練習試合も含めると試合にはどのくらい出場していますか?

新村選手
練習試合ではほぼ毎試合出させてもらえて、中継ぎとして2−3回投げさせてもらえることが多いです。

小石
どのタイミングで投げることを言われましたか?

新村選手
前の打者の打席が終わった後です。タッチアップで勝ち越された後の2死走者なしという状況での登板でしたが、結構急なタイミングで「未来いくぞ」と言われました。基本的には毎大会いつでも投げれるように言われているので、準備はできていました。

小石
対戦したヤマハの前野選手は社会人野球屈指の好打者ですが、対戦してみてどうでしたか?

新村選手
試合に入るときに、打順は見ずに行こうと思っていました。相手が誰だとしても私からしたら格上のバッターなので。いざマウンドに立つとすごく大きくてスイングも鋭かったですが、そこで怯んだら負けだと思いました。公式戦でチャンスをもらえることは少ないので、ピッチャーとしてそのチャンスを生かしたいなと思いました。キャッチャーの吉永さんやバックを守る守備の方々もすごく信頼しているので、サインを信じてその通りに投げました。

小石
社会人野球で勝ち投手になったことに対してはどのように感じていますか?

新村選手
記録上は勝利投手ですが3球しか投げていないので、自分が勝ち投手とは思っていないです。そこまでつないでくれた川里さんやその後抑えてくれた宮島さん、その前の試合で山岸ロジスターズ相手に抑えてくれた大沢さんも含め全員が勝利投手というように感じています。チームメイトからも「ナイスピッチング」と声をかけていただき、嬉しかったですが、その反面複雑な気持ちもありました。

小石
今回公式戦初勝利を成し遂げましたが、次の目標はありますか?

新村選手
自分が投げて勝てたらすごく嬉しいですが、チームとして勝つことを目標にやっているので、私が出れなくてもチームが勝てればいいなと思います。試合に出ていなくても貢献できることはいくらでもあるので、「貢献できない試合は作らない」と決めています。

小石
素晴らしい考え方ですね。

新村選手
高校ではずっと試合に出れていましたが、社会人では試合に出れていない時間も多いです。その時に高校の時の人たちがこういう動きをしてくれたんだなということを感じ、その分今は返さければと思っています。チームの人たちもすごく良い人たちなので、支えになりたいなと。高校の時から自分が一番に動くということをキャプテンとしてやっていましたが、社会人でもそこは変わっていないです。

小石
「次は先発して勝ち投手に」という思いもありますか?

新村選手
そうですね...
自分は先発向きではないと思っています。
自分は先発向きではないと思っています。

小石
というと?

新村選手
高校時代は先発していましたが、社会人野球では前に投げたピッチャーの球が速いから自分の遅い球が生きるというところがあると思います。自分自身のピッチングスタイルとしても緩急を使ってコースをつくというスタイルなので、先発というよりは前のピッチャーの投球も上手く生かしながらやっていきたいなと思います。

小石
中継ぎのスペシャリストを目指すと。

新村選手
そうですね(笑)目指したいと思います!!
岐阜第一高校では主将として全国準優勝にチームを導く 新村選手の現在までの野球歴


小石
高校時代は女子野球部に所属していたんですよね?

新村選手
はい。
岐阜第一高校の女子野球部に所属していました。
岐阜第一高校の女子野球部に所属していました。

小石
岐阜第一高校の女子野球部を選んだきっかけを教えてください。

新村選手
高校では地元の男子硬式野球部に進むことも考えていましたが、友達に誘われて岐阜第一の女子野球部の体験にいったことがきっかけです。男子野球部に入った場合は公式戦に出場することはできないので、試合にたくさん出て経験を積みたいという思いから岐阜第一を選びました。

小石
実際に女子野球の世界に進んでどうでしたか?

新村選手
岐阜第一高校女子硬式野球部の2期生だったので、1年生の時からたくさん試合経験を積むことができました。1年時の夏の大会は正捕手ではないですが、キャッチャーとして出場していました。

小石
チームとして大会ではどの様な成績を残していましたか?

新村選手
先輩たちがいる間は勝つことができませんでしたが、2年生秋のユース大会で公式戦初勝利をあげ、そのまま全国準優勝まで一気に勝ち上がりました。

小石
その時はエースとして投げていたのですか?

新村選手
そうですね...
チームにいいライバルがいて、いつも競い合っていました。
その子は左ピッチャーで、どっちがエースというよりは二本柱だったという感じです。
チームにいいライバルがいて、いつも競い合っていました。
その子は左ピッチャーで、どっちがエースというよりは二本柱だったという感じです。

小石
今振り返ってみると女子野球部での高校野球生活はどうでしたか?

新村選手
岐阜第一に行ってよかったなと思います。単純に野球を楽しむことができ、スポーツコースで、寮も近く、ナイターで練習ができるなど環境が整っていたので、野球に打ち込むことができました。野球に接する時間がすごく多かったので、選択してよかったなと思います。

小石
高校卒業後すぐに静岡硬式野球倶楽部に入ったわけではないですよね?

新村選手
そうですね。
最初は月に2回くらい藤枝にあったアスレジーナという女子硬式野球チームに参加していました。県内初の女子硬式チームだったのですが、指導者もおらず、練習も少なかったので人も集まらなくて潰れてしまいました。他には中学生のクラブチームの指導をしていたり、野球には関わっていましたが、しっかりプレーはしていなかったです。
最初は月に2回くらい藤枝にあったアスレジーナという女子硬式野球チームに参加していました。県内初の女子硬式チームだったのですが、指導者もおらず、練習も少なかったので人も集まらなくて潰れてしまいました。他には中学生のクラブチームの指導をしていたり、野球には関わっていましたが、しっかりプレーはしていなかったです。

小石
大学で女子野球部に入ろうとは思わなかったのですか?

新村選手
高校生の時に日本代表のテストを受けて、受かったら大学でもやろうと思っていましたが、落ちてしまったので。怪我もしていて、野球に100%打ち込める状況ではなかったので、そこまで野球に重きを置いてはいなかったです。

小石
怪我というのは?

新村選手
3年生の夏の大会3ヶ月前くらいに肩の怪我があり、最後の大会ではなんとか投げれましたが、腕が上がらなかったり鉛筆も持てないことがあったので、もう野球できないかなと思っていました。大会後もなかなか思うように投げれなかったので。

小石
静岡硬式野球倶楽部に入部したのは?

新村選手
去年の秋ぐらいから参加して、選手登録は今年からです。

小石
入部したきっかけを教えてください。

新村選手
ショートの池井戸さんが、アスレジーナの先輩の友達として練習にきていて、それがきっかけで静岡硬式野球倶楽部の練習に参加させていただきました。

小石
静岡硬式野球倶楽部には女子選手が在籍したの前例はあったのですか?

新村選手
過去にいたとは聞いていますが、公式戦に出たりということはなかったみたいです。

小石
監督や周りの選手の反応はどうでしたか?

新村選手
最初に練習に参加した時に前監督で現総監督の金田さんが快く受け入れてくれたので、「男子の硬式クラブチームに私も入っていいんだ!!」と思えました。最初は馴染めるかも不安でしたが、みんないい人ばっかりで仲も良くてやりやすいです。

小石
女子野球から男子野球というパターンは珍しいことだと思いますが、そこで感じたギャップはありますか?

新村選手
中学生の時はキャプテンをやっていたのですが、思春期ということもあり、言うことを聞いてくれなかったりストレッチでペアを組んでくれる人がいないと言うことがよくありました。今のチームではそのようなことは全くないので、みんな大人だなと思いました。選手としても尊敬できる部分は多くて、同じ投手の大沢さんは特に参考にさせていただいてます!
プレー姿から野球の魅力を伝えたい! 地元静岡での女子野球普及に対する思い


小石
今年、高校女子野球が甲子園で開催されたことについてどの様に感じましたか?

新村選手
羨ましいなと思いました。男子と一緒に「目標は甲子園」と口に出せる時代になったというのは嬉しかったですし、女子野球人口が増えてきている中で、静岡でも盛り上げていきたいなと思います。静岡の高校にも女子野球部が2つできたのですが、東京のように企業とかクラブチームが静岡でもできたらいいなと思います。

小石
「静岡で」という気持ちが強いんですね。

新村選手
そうですね。
大学を選ぶ時も高校で外に出た分地元でという気持ちもありました。就職も静岡で考えています。
大学を選ぶ時も高校で外に出た分地元でという気持ちもありました。就職も静岡で考えています。

小石
将来的には静岡で女子野球の指導者にみたいなことも考えますか?

新村選手
そうですね。
でも自分が動けなくなったらですね。
まずはプレイヤーということでやっていきたいです。
でも自分が動けなくなったらですね。
まずはプレイヤーということでやっていきたいです。

小石
女子野球発展に向けて新村さんができることはどの様なことだと思いますか?

新村選手
静岡県でも女子野球が拡がって欲しい思いますが、「待ち」の姿勢だと難しいと思います。私がプレーしている姿を見てくれる方に野球の魅力というものが伝染していくと思うので、プレー姿から野球の魅力を発信できればと思います。現在は中学生にも指導していて、チームに女の子も1人いるので、そこからも拡げていきたいなと思います。

小石
新村さんの姿を見て男子クラブチームで野球を続ける女子選手も増えるのではないかと思います。

新村選手
そうなってくれると嬉しいです。

小石
本日はありがとうございました。

新村選手
ありがとうございました。
高校や大学、社会人の各世代において女子野球チームは増加していますが、全国どこにでも女子野球を続けられる環境があるわけではありません。
また、大学や社会人野球では女子選手が公式戦に出場できるということを知らない人も少なくはありません。
今回の新村選手の活躍により、社会人野球でも男子の中で活躍できるということが女子選手に伝わり、男子社会人野球に挑戦する女子選手が増えるということもあるのではないでしょうか。
新村さんの活躍が、様々な目標や目的を持った選手が集まる社会人野球において、ベストな形で野球を続けることのできる女子選手の増加に繋がることに期待しています。