【前編】女子野球選手100人アンケートコントロール部門1位 埼玉西武ライオンズレディース・里綾実

昨年末、megaphoneでは「直球」「コントロール」「変化球」「長打力」「バットコントロール」「走塁」「守備」の計6部門で100人の女子野球選手にアンケート調査を行いました。

今回は変化球部門、直球部門で2位にランクイン、コントロール部門では得票数で2位以降と倍以上の差をつけて1位に輝いた埼玉西武ライオンズレディース・里綾実投手にお話を聞かせていただくことができました。
W杯3大会連続MVPを初めとした、数々の活躍を残した女子野球界を代表する投手である里投手に、コントロールを安定させるための練習方法や考え方等をお聞きしたので投手や指導者の方は必見です

【里綾実(さとあやみ)】
1989年12月21日生まれ。鹿児島県出身。

[経歴]
神村学園高等部
尚美学園大学
レイア(2013-2014)
愛知ディオーネ(2015-2019)
埼玉西武ライオンズ・レディース(2020-)

[日本代表歴]
2010年 第4回女子野球W杯(最高勝率)
2012年 第5回女子野球W杯(救援投手ベストナイン)
2014年 第6回女子野球W杯(大会MVP)
2016年 第7回女子野球W杯(大会MVP・先発投手ベストナイン)
2018年 第8回女子野球W杯(大会MVP)
2021年 第9回女子野球W杯(開催延期)

“自分の身体を自分の思った通りに動かす” 里投手が実践するコントロール安定の秘訣

小石
まず初めにコントロール部門1位に輝いた感想はいかがですか?
里投手
投げている側からすると相手がどのように感じているかはわからないので、実際に対戦する相手がそのような印象を持ってくれている「そういうことを思っているんだ」ということをしれたことは面白かったです。
小石
チームの4番・豊田選手は先日のアンケートで3部門全てで里投手に投票していますが、普段西武の野手とはそういった話をすることはないんでしょうか?
里投手
あんまりしないですね。
小石
里選手自身がピッチングで一番自信を持っている部分はどこでしょうか?
里投手
コントロールですかね...試合を作れるとかそういうところだと思います。
小石
なるほど、里さん自身もコントロールを武器だとお考えなのですね。
里投手
そうですね。そこは調子が悪い時でもある程度はできるのかなと思うので
小石
練習から試合を通して、最も大切にしていることはなんですか?
里投手
一番はシンプルに自分の身体を自分の思った通りに動かすということだと思います。投げるにしても自分が一番力の入るところで投げるというか。ただ思いっきり投げることと全身を使ってボールに力が乗った真っ直ぐを投げることは、側から見たら同じように見えるかもしれませんが、感覚として全く違うので、自分がベストな動きができるようにということを心掛けています。
小石
確かに感覚やイメージと身体の動きが一致する事が出来れば、良いボールを安定して投げれるようになれそうですね。となるとケアの部分も大事にしてらっしゃるんでしょうか?
里投手
もちろん大切にしています。アップもそうですし、キャッチボールもそうですし、動きが悪いなと思ったら、納得するまで走ったり動いたり、何か違うアプローチをして常に同じ状態でマウンドに上がって投げれるようにということを心掛けています。その時々で違うのではっきりとは言えないのですが、準備の段階でなるべくそういう違和感をなくしていくために『どうやったら上手く動けるだろうとか』ということを常に考えています
小石
試合前に身体の動きをチェックするのはどのタイミングですか?
里投手
動き出した時です。「今日はちょっと張ってるな」とか、「手をあげにくいな」とか。
小石
ピッチャーだからというより、野手でも共通しそうな考え方や取り組みだなと感じました。
里投手
そうですね。今日も紅白戦の前にノックに入って野手と一緒に練習をしました。ノックにはたまに入るのですが、ただ投げるだけではなくて、どのポジションでも同じ動きができるということを意識してやっています。1塁とか2塁とか場所が違っても、相手の胸に投げられるように、角度や体制が違っていてもそこに投げられるようにするにはどうしたら良いのだろうということをやります。
小石
確かに野手は投手より投げ方のパターンは多いですよね。ノックではポジションはどこに入ることが多いですか?
里投手
内野も外野も全ポジション入ります。距離が近くても遠くても同じような球が投げられるようにしたいので。遠いから力一杯投げるとかではなくて、同じような力で同じような質の球を投げるためにはどうしたら良いのかということを考えています
小石
そういった取り組みも里さんのコントロールに繋がっているんですね。
里投手
そうですね。それができると自分の身体を操れるし、力もコントロールできるので、このぐらいの力で投げたら良い球がいくなというのを調整できるようになります。

“その球種にあった一番力の伝わる腕の振りを” 変化球を狙った通りにコントロールする意識とは?

小石
投手の悩みの中に変化球を覚えてもコントロールが中々できないということがあると思います。里選手は他の選手から、「ストレートも変化球もコントロールが良い」という意見がありましたのでそこについてもお話を伺いたいのですが、今は変化球は何を投げていますか?
里投手
縦カーブとスライダーぐらいですね。
小石
投げるときはどういう意識なのでしょうか?
里投手
どういう意識......狙ったところに投げれるようにということですかね...(笑)
小石
なるほど(笑)、ストレートと変化球で同じようにという意識はありますか?
里投手
いえ、同じようにはしないですね。やっぱり球種が違うので、投げ方も違うと思います。その球種にあった一番力の伝わる腕の振りというイメージで投げています。球種ごとにリリースポイントとかは変わってくるとは思うのですが、同じ様な力の入れ方で腕振って投げているので、見え方としては同じ様に見えるのかなと。
小石
よくフォームや腕の振りが同じだと打ちづらいと言われますが、しっかりボールに力を伝えるようにやった結果がバッターには同じフォームに見えるということなんですね
里投手
だと思います。
小石
カウント球や決め球、先発や中継ぎで力の入れ方を変えることはありますか?
里投手
そんなには考えないですね。
小石
では基本は10割で投げるということでしょうか?
里投手
10割だとやっぱりコントロールしにくいので、自分がコントロールできるベストな力で投げるという感覚です
小石
そのベストな力加減というのは長年の経験から感覚を身に着けたのでしょうか?
里投手
キャッチボールの時からですが、がむしゃらに投げて狙ったところにいくことは無理なので、このぐらいで投げたら自分の理想のボールがいくなという感覚を確かめていきます。ピッチングになると傾斜があったり足場は絶対違うので、その中で同じ様に同じ力で投げられる様に確認しながら調整をしていきます。
小石
その感覚は日によっても変わるものなのですか?
里投手
それはもうコンディションが違うので。それはもうコンディションが違うので。自分の身体の使い方を常に考えていると、「身体が疲れているから力まないようにしよう」とか「今日は張ってるな」とか「重いなとか」そういうことがなんとなくわかるので、それをアップの時にクリアにしていくという感じです。
小石
先ほどの身体を自分の思った通りに動かすという話に繋がっていくわけですね。
里投手
そうですね。試合開始までは確認作業の繰り返しです。

W杯では3大会連続でMVP獲得し、今もライオンズのエースとして活躍を続ける秘訣は常に身体の使い方を意識し、毎日の準備段階でその確認作業をしていくというところにありました。

後編ではピッチャーには必要不可欠な配球の考え方や後輩投手へのメッセージ、今シーズンの目標についてお話しいただきました。後編もぜひご一読ください!!

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