
「直球」「コントロール」「変化球」「長打力」「バットコントロール」「走塁」「守備」の計6部門で100人の女子野球選手にアンケート調査を行いました。
今回はバットコントロール部門で最多票を獲得した阪神タイガースWomen・三浦伊織選手にお話を聞かせていただきました。

【三浦伊織(みうらいおり)】
1992年3月11日生まれ。愛知県出身。
[経歴]
京都アストドリームス(2010-2012)
ウエスト・フローラ(2013-2014)
京都フローラ(2015-2020)
阪神タイガースWomen(2021-)
[日本代表歴]
2012年 第5回女子野球W杯
2014年 第6回女子野球W杯
2016年 第7回女子野球W杯
2018年 第8回女子野球W杯
2021年 第9回女子野球W杯(開催延期)
女子プロ野球通算.383の打率を誇り、今回のアンケートでも全部門中最多となる34票を獲得した三浦選手にヒットを量産するための打席での考え方や練習での意識についてお話しいただきました。
Contents
「一番打てる確率の高いボールを待って一発で仕留める」三浦選手の打席での考え方


小石
今日はよろしくお願いします。

三浦選手
よろしくお願いします。

小石
バットコントロール部門1位の感想をお願いします。

三浦選手
バッティング・バットコントロールという部分には自信を持っていて、注目してもらいたいと思っている部分なので、同じ女子野球選手に選んでいただいたことは光栄だなと思います。

小石
バッティングの中で1番大切だと思うことは何ですか?

三浦選手
自分の打てるボールをしっかり待つことかなと思います。

小石
というと?

三浦選手
ピッチャーは打ち取ろうと投げてきているので、ボール球を振らないとか、選球眼をしっかりするように心掛けています。一発で仕留められるボールはどれかということをいつも練習でやっているので、一番打てる確率の高いボールを待って、それがきたら打ちにいくという感じです。

小石
打席にはどのような気持ちで入りますか?

三浦選手
焦らないことですかね。とにかく自分の準備してきたことがあるので、それをしっかり発揮できるように、打席に入る前のルーティーンとかを決めたりしています。後は追い込まれてもストライクゾーンは変わらないので、気持ちの焦りとかを取っ払って、自分の打てる球を見逃さないようにしています。

小石
実際緊張はする方ですか?

三浦選手
緊張はするのですが、ピッチャーがモーションに入ったら忘れちゃってますね(笑)足が震えたりとかもします。愛媛の0-5で負けている試合で満塁の場面で回ってきたときは「フォアボールでもヒットでも全然足りないな」「長打になればいいな」と追い込まれてめちゃくちゃ緊張はしていました。
参考:0-5から三浦選手の満塁ホームランから逆転勝利した2021年全日本女子硬式野球選手権1回戦

小石
それでもピッチャーがモーションに入ったら忘れてしまう?

三浦選手
そうですね。とにかくやることがあるので。例えば打席の中で自分のフォームを考えて待っているんですよ。なので「どうしよう、打てないかも」とかではないんですよね。自分のフォームを考えて、自分の好きなボールを選ぶだけと思っています。

小石
どの場面でも同じ考え方ですか?

三浦選手
そうですね。相手のピッチャーの配球とかは全く考えられないので、とにかく自分のフォームで意識しているいつもやっているところを意識して構えているだけみたいな感じです。
「ストライクゾーンを3分割して決まった方向に打ち返す」バッティング練習での意識


小石
スイングの軌道はどんなイメージですか?

三浦選手
どういう軌道なんですかね...?あまりわからないですが、私はテニスをやっていたので、テニスのスイングに似ているとはよく言われます。面で捉えるイメージです。

小石
テニスがバッティングに生きていると感じる部分はありますか?

三浦選手
どうなんですかね...青木選手とかがテニスのラケットを使って練習していると言う記事を見て、共通する部分はあるのかなとは思っていますが、実際テニスはイップスだったので、参考になってはいなかったです。私自身はそう感じることはないですが、周りからは言われているのでもしかしたら繋がっているのかなと。(笑)


小石
何か特別な練習はしていますか?

三浦選手
全くしていないです。練習はティーバッティングとかフリーバッティングをしてという感じなので、みんなと同じです。唯一言うのならば、「このボールはあそこに打つ」というのを設定しています。このコースはレフトに打つとかセンターに打つとか。ずっと同じフォーム同じ打球が飛ぶようにということを意識してはいます。

小石
それはフリーバッティングの中でやっていることですか?

三浦選手
そうですね。フリーバッティングでコントロールの良いバッティングピッチャーの方であったら、ずっと外に投げてもらってそれをずっとレフトにという練習をします。選手みんなで回して投げてだとそこまでのコントロールはないので、自分の中でストライクを3分割してそれをレフト・センター・ライトに打ち返せるようにやっています。ただもっと調子が悪い時は全てセンター方向に返せるようにやっています。基本はセンター返しなので。

小石
その練習は毎日同じ狙いで行うのですか?

三浦選手
そうですね。毎日ほぼ一緒です。例えば、普段アウトコースをショートの頭に良い打球がいくところがショートゴロとかになってしまっているときは、自分の中で感覚がずれている部分があります。フォームとかいろんなところを考えて、自分が持っている引き出しの中からどれが当てはまるかを確認するという作業をします。引き出しは大体5.6個持っています。

小石
バットは何を使っていますか?

三浦選手
バットはSSKのクロノマスターを使っています。中学硬式用のバットです。ずっとデマリニのハジキの良い「カキーン」みたいなバットを10年ぐらい使っていましたが、それが廃盤になってしまったので...そのバットがすごく気に入っていて、そのバットのおかげで女子プロ時代ずっと打てていたので、そのバットがなくなるので私もやめ時かと思っていたのですが...(笑)そのバットが二重構造だったので、途中から国際大会では使用できなくなってしまったんですよ。そういう事情も見据えていろんなバットを試して辿り着いたのが、SSKの今のバットです。でもそれももう廃盤になるんですよね(笑)私が好きなのはあまり人気がないみたいです...

小石
バットでこだわっている部分は?

三浦選手
細さです。細い方がしっくりきます。グリップエンドとかが太いタイカップみたいなのはあまり好きではないです。
左バッターはショートの頭、右バッターはセカンドの頭を!!


小石
後輩の女子選手に向けて、やっておいたほうが良い練習はありますか?

三浦選手
左バッターならショートの頭、右バッターならセカンドの頭に打つためにはどうしたら良いかということを考えてやることだと思います。

小石
それはどうしてですか?

三浦選手
引っ張るのは自分の身体からポイントが近い分簡単に打てるんですよ。なので、そういう簡単って思うところが心の隙というか、簡単に打てるからこそ肩に力が入って早く開いちゃうとか、ライトに思いっきり飛ばそうとかいうことを考えてしまうので。しっかり肩が我慢できるのは外の球を打つことです。私はショートの頭を狙う練習をずっとしていたらこの感じになったので、よかったのかなと思っています。

小石
来年以降の目標を教えてください。

三浦選手
せっかくこうやってバッティングで注目していただいているので、とにかくバットコントロールで1本1本魅せていけるようにやっていけたらなと思っています。

小石
女子野球の発展に向けて三浦選手の考えを教えてください。

三浦選手
色々なチームが増えて、巨人も再来年できるということで、凄く女子野球熱が出てきたというか、女子野球が多くの人に認めてもらえるようになってきています。昔では考えられなかったことができるようになってきてはいるので、これからの選手はそういったことを繋げていってほしいです。そしてレベルをあげて女子野球を盛り上げていけたらなと思います。

小石
三浦選手自身はどういった部分で盛り上げたいと思いますか?

三浦選手
やはり野球は男の人のものというイメージなので、女子でも男性に近いバッティングができるというようになってはいきたいので、「これだけ打てるんだ」ということを見せていきたいと思います。

小石
現役はあとどれくらい続けますか?

三浦選手
そうですね...あと10年です...嘘です(笑)できる限りは頑張ります!!
女子プロ野球の打撃部門のリーグ記録をほとんど保持している女子野球のレジェンド打者は、今季始動した阪神タイガースWomenのキャプテンとして1年間の活動を終えた。球団アカデミーのコーチとして、次世代の育成にも貢献する三浦選手ですが、現役選手として「プレーで女子野球を盛り上げたい」と話しました。来年以降も三浦選手の鮮やかなバットコントロールには注目です!!