
女性アスリート情報のウェブメディア「megaphone」を7月に開設し、私がmegaphoneの編集長となった後に開催された初めての公式戦。全日本女子硬式野球選手権大会。昨年は新型コロナウィルスの影響で中止。2年ぶりの開催となった第17回大会は2日目途中から天候が悪化。3日目と最終日が悪天候により試合開催不可となり、予備日がないため決勝戦を行うことはできず、エイジェックとIPU環太平洋大学の両チーム優勝として幕を閉じました。

全日本女子硬式野球選手権大会の開催地・松山へ行くのは今回が初めてのこと。
荷物の持ち運びや現地での移動、感染症対策等、様々な要因から東京から車で行くことを決めました。東京から神奈川・静岡・愛知・三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・徳島・香川を通過し、片道10時間を掛け愛媛県松山市へと向かいました。
大好きなSMAPの楽曲をBGMに車を走らせ、あっという間に兵庫県。
夕焼け×明石海峡大橋×「オレンジ/SMAP」というエモいシチュエーションに疲れも吹き飛び、そのまま松山市に到着。
道中の運転から合計30試合の観戦・取材、試合終了後の記事制作を全て1人で行うこととなりました。大会1日目から2日目前半は猛暑、2日目後半からは大雨という厳しい環境の中、試合は行われました。選手・関係者の方々は当然大変だったと思いますが、2会場を行き来しながら試合観戦・写真撮影・監督インタビュー等を行い、記事を制作するという作業は思っていた以上に体力を使う仕事でした。

6泊7日をひとりで過ごすわけですから、会話は取材時を除いてほぼありません。「初四国なので美味しいものを!!」と出発前は考えていましたが、その様な余裕はありませんでした...
私はこれまでプロ野球・高校野球は頻繁に観戦してきたものの、女子野球の試合を1大会通してじっくりと見ることは初めてでした。非常にタイトなスケジュールでの初観戦でしたが、改めて女子野球の魅力に気付かされることとなり、「女子野球を応援したい!」という一ファンとしての気持ちと、「女子野球を拡めたい!」という一記者としての想いを強く感じることが出来ました。
そんな気持ちを選手や関係者、ファンの皆様と共有し、新たに女子野球に興味を持ってくれる人が1人でも増えることを願い、この記事を書いていきたいと思います。
Contents
決勝戦は行うことができず、2チーム優勝という結果に

本大会は予備日が設定されていませんでした。全6日間の日程の内2日間が雨天中止となったため、決勝戦を行うことはできませんでした。中止となった2日間以外の開催日も悪天候やグラウンドコンディション不良に悩まされた大会であったと思います。
当然、選手やチーム関係者の方々はベストコンディションで試合を行いたかったという気持ちもあったかと思われます。しかし、選手やチーム関係者、大会運営やグラウンド整備等に協力している方々が一体となり、「限られた日程・条件の中でベストを尽くそう」という思いが伝わってきました。
2日目の坊っちゃん第3試合、CHESTQUEENS折尾愛真対平成国際大学の試合では特にそれを感じることができました。この試合は、12-0とコールド目前の4回裏に土砂降りとなり、試合は一時中断。グラウンドは水浸しとなり、試合続行不可能かと思われました。この段階で既に両球場の第4試合は翌日に順延が決定。この試合も続行不可能だと思われましたが、2時間にも及ぶ中断を経て試合再開。翌日は両球場共に5試合の開催だったため、この試合が完了していなければ日程を調整するのはかなり難しかったと思われます。

“全国大会”として、2チーム優勝という結果は煮え切らない部分もありますが、最後は両チーム選手から嬉しそうな表情を見ることができ、両監督からも「この様な形でも優勝。選手たちを讃えたい。」という話を聞くことができました。また、室内練習場で表彰式では両チームとも全力で楽しもうという姿勢が見ることができて、初の全日程観戦を終えた筆者としても最後まで楽しむことができました。
本来であれば、予備日等を設定して決勝戦までベストコンディションで行えることが全国大会として望ましい形だと思います。女子野球メディア「megaphone」の編集長として選手の頑張りや女子野球の魅力を伝え、女子野球ファンを増やすという形で、より良い大会が行われるようになることに貢献していきたいです。
個人的に思う大会ベストゲーム
アサヒトラスト 対 埼玉西武ライオンズレディース

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | R | |
アサヒトラスト | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 |
埼玉西武LL | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2× | 5× |
バッテリー
アサヒトラスト:鈴木ー渡辺
埼玉西武LL:里・清水美ー英
大会3日目(8月10日)のマドンナ第5試合に行われた2回戦、昨年のクラブ選手権覇者・埼玉西武ライオンズ・レディースと全日本選手権2回の優勝を誇る名門・アサヒトラストの一戦。全ての試合を見ることができたわけではありませんが、この試合が今大会を通して1番印象に残る試合でした。
1回戦でそれぞれマドンナ松山・履正社RECTOVENUSをコールド勝ちで破り、2回戦に進出した両チーム。西武先発はマドンナジャパンのエース里綾実。試合が始まるまでは、4人のマドンナジャパン代表を擁し、山田優理・豊田京花・清水優花など、一昨年の同大会覇者・尚美学園大学から新戦力が加入した西武が試合の主導権を握るのではないかという見方が大半であったと思います。
しかし、2回1死からトラスト打線が里を捉え5連打で3点を先制。大内監督の「里投手はスライダーが得意だと分かっていたので、真っ直ぐは捨ててスライダーをフルスイングしようという指示を出し、選手がそれによく対応してくれました。」という言葉の通り思い切りの良いスイングが目立ちました。
トラストの先発は鈴木ちなみ。強力西武打線相手に力強い直球で果敢にインコースを攻める強気の投球を披露しました。女子野球の投手はアウトコース主体で打たせてとるピッチングというイメージを勝手に持っていたので、このピッチングには痺れました。
リードを許す展開となった西武ですが、終盤に意地を見せます。1点ビハインドの7回裏、先頭の英菜々子が7球粘った末に気迫のヘッドスライディングで内野安打で出塁すると、この試合3安打目となる豊田京花、主将の出口彩香が繋ぎ、パスボールの間に同点。申告敬遠を挟み、最後は代打・加藤萌音のタイムリー内野安打でサヨナラ勝ちとなりました。

長年女子野球界を牽引してきた名門・アサヒトラストとNPBの名を背負った昨年の王者・埼玉西武ライオンズレディース。両者の意地がぶつかりあったこの試合は手に汗握る好ゲームでした。勝利した西武選手陣のホッとした表情や、敗れたトラスト選手陣の本当に悔しそうな表情もあり、とても印象に残る試合となりました。
女子野球の更なる発展に向けて、憧れとなるクラブチームの増加に期待

甲子園開催による盛り上がりや勢いもあってか、今大会では高校勢の活躍も目立ちました。高校勢は全国各地から参加した強豪クラブチーム相手に、参加した6チーム中5チームが一回戦を突破。岡山学芸館高校はベスト8という好成績も残しました。
今大会に参加した高校6チームは春の大会で好成績を収めたチームで、直前に行われた夏の大会では全てのチームが好成績を収めているわけではありません。今夏の全国大会には史上最多40校が参加した高校女子野球。今大会で強豪クラブを破った高校を下している高校もたくさんいると考えると、高校生のレベルは社会人に劣っていないと言えるでしょう。
高校女子野球の全国大会初開催から8年後にスタートし、第1回大会では高校チーム同士の決勝戦であったことから考えると、全国各地に強豪クラブチームが誕生している現在の状況は悪くはないかもしれません。しかし、全日本選手権では未だに大学生チームの優勝・準優勝が圧倒的に多いのが現状です。
現在、女子野球部で活躍する高校生や大学生が卒業後も野球を続けたいと感じるためには、強くて魅力的なクラブチームが必要不可欠だと思います。例えば、前項で紹介したトラスト対西武の試合を見た高校生・大学生は心を動かされたと思います。他にも、東海NEXUSや東近江バイオレッツといった地域密着型のチームが3位に入賞するなど、取り組みも強さも魅力的なチームは増加しています。今後、女子野球の更なる発展に向けて、その様なクラブチームが増加していくことを期待しています。

女子野球の魅力を拡めるために...
10月には全日本女子硬式クラブ野球選手権が行われます。
クラブチームの日本一を決めるこの大会は千葉県市原市で開催されます。関東圏からもアクセスしやすいので、女子野球に少しでも興味を持った方は球場に足を運んで欲しいです。日本一を目指し闘う彼女たちの姿から、「女子野球ならではの魅力」を見つけることができるでしょう。
実際に球場に足を運び、目の前でプレーを見なければわからないことはたくさんあります。
女子野球の普及・発展には、ファンの皆様一人一人の声も必要となってくると思います。女子野球の魅力を拡めるために、意見や提案があれば気軽に連絡してください。一メディアとして力になれることはごく僅かかもしれませんが、選手・チーム関係者・連盟の方々・ファンの皆様と一体になって女子野球を盛り上げていきたいと思います。
今後もよろしくお願いします!!