「世界に向けて野球普及活動Vol.1」小出加会が香港で起業することで手に入れた、女子野球発展に繋がる重要なマインドとは

皆さんは女子野球が世界でどのくらい盛んに行われているかご存知ですか?

あまり知られていませんが女子野球にもワールドカップがあり、日本代表は大会6連覇を達成するなど圧倒的な強さを誇っています。日本は世界の女子野球界を牽引しており、海外に進出してプレーをしながら普及活動に貢献している日本の女子選手も多いです。

今回インタビューにご協力いただいた小出加会さんは香港で起業し、野球に関わるビジネスをする中で普及活動を行っています。

【小出加会(こいでかえ)】1994年4月5日生まれ。東京都出身。
学生時代は女子野球の名門である埼玉栄高校・平成国際大学の女子野球部に所属。幼少期から海外各地への渡航歴を持ち、大学卒業後にはフィジーに語学留学。現在は香港で起業し、野球用品の輸入販売、インターナショナルスクールでの野球教室、日本語のレッスンなど野球を中心とした様々な事業を行っています。

<インタビュアー:吉井萌美>

小出さんは私の高校・大学の一学年下の後輩なので、一緒にプレーしていました。当時は人見知りだったように感じていましたが、久しぶりに話すと雰囲気が凄く変わった気がします。

海外の力ってすごいなと感じます!

people企画第1弾「世界に向けての野球普及活動」Vol.1は香港編ということで、

『なぜ香港?実際香港ってどうなの?』

『仕事はどんなことをやっているの?』

『今後女子野球を世界で拡めていくには?』といったことを聞いてみました!

実際に海外で活動する人にしか分からないことがたくさん聞けて私自身も非常に勉強になりました。
皆さんぜひ最後まで読んでいってください!

野球に男子も女子も関係ない!! 香港の女子野球事情

吉井
今は香港で野球に関連した仕事をしてるんだよね?
小出さん
そうですね。
吉井
香港はそんなに女子野球は盛んじゃないよね?
小出さん
はい。野球自体があまり盛んじゃないですね。かといって女子選手がいないわけではないです。人口から見るとチーム数とかは少ないですが、それでもチームはいっぱいあって、その中でやってる女の子はいます。
吉井
なるほど。野球自体が盛んではないけど女子選手はそれなりにいるんだ。
小出さん
こっちだと『野球が男のスポーツ』ってイメージがないと思います。
男女関係なくスポーツをやりたければやるみたいな感じで野球をやってます。
吉井
野球を行う環境はどうですか?
小出さん
あまり良い球場はないですね。人が多いのに土地が少ないので、
新たに作ることも難しいと思います。代表チームは男女ともありますが、
プロ選手みたいな感じではないです。男子代表でも普段は仕事をしているので、
日本の女子野球の代表と同じような感じです。
吉井
女子野球の面ではどうですか?海外で野球をやりたいと思っている女子選手には勧められる国ですか?
小出さん
どこを中心に置くかですね。どういう目的を持っているかで全然違います。
吉井
というと?
小出さん
海外に行きたいと思っているということは少なからず英語に興味があるとは思います。
英語を勉強したい、英語を使って仕事をしたいということがメインであれば、香港はおすすめです。
でも、1-2年だけ野球をやって日本に帰りたいとかであれば、オーストラリアとかに行った方がいい経験ができるかなと思います。
吉井
プレイヤーということを第一に考えるとそんなにおすすめはできない?
小出さん
うん。そうですね。でも、指導者とか、発展途上の野球チームとかに興味がある人にはいいと思います。強いところにいくのではなく、『発展途上のところで野球を教えたい』『英語を使って野球を教えたい』という目的を持っている人にはいいと思います。いろんな経験はできると思いますよ。

英語圏よりも英語が身に付く 語学留学という観点での香港

吉井
英語を勉強したいという人におすすめなのはどうして?アメリカとかオーストラリアみたいな英語圏の方が良さそうだけど、、、
小出さん
私の経験上の話ですが、英語に自信がない人にはアジア圏を勧めます。確かにアメリカやオーストラリアでは本場の英語を学べるので良いと思います。でも英語初心者の人が行った場合、8割くらいの会話をイエスかノーで済ませてしまう場合もあると思うんですよね。自分から英語を話すチャンスは少なくなってしまいます。
吉井
確かにそうだね。香港だとどうなるの?
小出さん
香港では見た目で日本人だとわからないので、広東語や中国語で話しかけてきます。広東語や中国語は何もわからないです。だから、お店とかに入っても自分から話さないと何もできないです。なので、必然的に自分から英語を喋る様になって、自分は香港にきてから変われた気がします。
吉井
そうだよね。日本にいたときは人見知りだったよね?
小出さん
あんまり喋るの好きじゃなかった、、、
吉井
めちゃめちゃ変わった気がする。
小出さん
香港はその面ではすごい良いと思う。香港の教育はすごいから、みんな4歳くらいで英語を喋れます。ちょっと都会の方にいけば欧米の人がやってる店とかあるので、ネイティブの英語にも触れることができます。
吉井
そうなんだ。街の雰囲気はどんな感じ?
小出さん
暮らしやすいですよ。インターナショナルな国だから、いろんな国のスーパーがあって、オーストラリアやアメリカ、タイの物が買えたりします。海外旅行とか行かなくてもいろんな国の気分を味わえる。日本の店で言えばドンキとかもあります。ドンキは香港でも人気があって、3-4件できてます。
吉井
日本人が英語を勉強しながら、アルバイトをするということは香港ではそんなに難しくはない?
小出さん
アルバイトはすぐ見つかるとは思います。語学学校とかもあったりするから、英語を勉強しながらでも大丈夫だと思います。ただ、家賃がすごく高いから、住むとしたらシェアハウスとかになると思います。
吉井
家賃高いんだ!どれくらい?
小出さん
リビング・寝室・仕事部屋の2LDKで、日本円で20万くらいです。
広さもそんなにないんですけどね。
吉井
そんなにするの!?
小出さん
でも、電気代・ガス代はすごく安いです。食費も上手くやりくりすれば、
合わせて月5万円くらいの出費で抑えられます。

野球を軸に事業を展開

吉井
香港ではどんな仕事をしているんですか?
小出さん
最初はワーキングホリデイで来て、日系の化粧品会社や引越し業者で働いてました。
その後、独立して今の仕事を始めました。
吉井
そうなんだ。今の仕事はいつ頃から始めた?
小出さん
去年の7月からなのでちょうど一年前ですね。
吉井
どんなことをやっているの?
小出さん
主に3つで、日本の野球道具の輸入販売・野球教室・日本語のレッスンを行っています。
吉井
野球を軸に色々やってる感じなんだ。事業は何人でやってるの?
小出さん
自分を含めて3人です。他の2人は香港の人で男性と女性で、全員が野球経験者です。パソコンでできる仕事なのでそれぞれ自分で時間を作って仕事をしています。
吉井
野球教室はどういう形でやっているの?
小出さん
インターナショナルスクールの幼稚園でやっているものと個人向けにやっているものがあります。
吉井
インターナショナルスクールというといろんな国の人がいるの?使うのは英語?
小出さん
子供も先生もいろんな国の人がいます。多いのは香港人と中国人ですね。
幼稚園では広東語や中国語は使わないで、みんな英語を使って授業をしています。
吉井
個人向けの野球教室というのは?
小出さん
インターナショナルスクールとは別でやってます。一対一のレッスンという感じです。
吉井
日本語のレッスンはどんな感じ?
小出さん
生徒は40人くらいいます。オンラインでの指導や一対一のレッスンなどをしています。
吉井
結構忙しそうだね。
小出さん
今は日本語のレッスンが忙しいです。今日も生徒が来る予定です。
その子はコロナが収まったら日本の学校に入りたいという高校生ですね。
その後17時から20時まではグラウンドで野球教室なので忙しいです。
休みは月一あるかないかみたいな。
吉井
月1日!?
小出さん
でも自分で時間はコントロールできます。
時間に左右されないのはめちゃくちゃいいことですね。

様々な国の野球を体験することができる香港

吉井
そこまで野球が盛んじゃない香港で野球メインの仕事をやろうと思ったきっかけは?
小出さん
いろんな国の人がいるということが一番ですね。
吉井
というと?
小出さん
子供のチームから大人のチームまで、日本人のチームやアメリカ人のチームみたいにその国の人だけで成り立っているチームも多いんです。香港で野球を見ることで、いろんな国のチームを見ることができ、国際大会を見に行ったような経験ができるんです。
吉井
色々勉強できそうだね。
小出さん
そうなんです。
レベルがすごい高いわけではないけど、コーチや監督もいろんな国の人がいて、考え方・教え方も全然違うし、それぞれの言語でやってるので見てるだけでも面白いです。
吉井
確かに面白そうだね。でも海外で起業するのって覚悟がいるよね?
小出さん
もともと日系の会社に入った時、めっちゃブラックだったんですよ。
最初は野球に関わろうというつもりはそこまでなかったんですけど、
なんで海外に来てまで日系のブラックにいるのかなと凄く思いました。
それなら日本にいた方がマシじゃないですか。
それで、『ここでしかできないことをやろう。失敗したら日本帰ればいいや!』
と思って今の仕事を始めました。
吉井
日本に帰って来る予定はない?
小出さん
今のところはあと2−3年こっちにいようかなと考えています。
生涯香港にいることはないかなという感じです。
日本に帰るか違う国にいくかはわかりませんが、
こっちだと家賃が高いので、ある程度お金を貯めて違う国へ行こうと思っています。
吉井
なるほど。この先はどんなことをしていきたいですか?
小出さん
海外の野球イベントに積極的に参加していきたいです。
自分が今の仕事始めたのも、
海外にいつでも行けるような状態を作りたいという思いもありました。

高校時代から心に決めていた海外への進出

吉井
最初に海外に行こうと思ったのは?
小出さん
高校生の時から大学に行くか海外に行くかで迷ってました。女子プロ野球の試験にも挑戦したんですが不合格で、大学か海外かで悩んでいた時に、「海外はいつでも行けるから、もっと日本のことを知ってからで良いんじゃない?」というアドバイスに共感し、大学を選びました。
吉井
大学を卒業したら海外に行こうと決めていた?
小出さん
そうです。就活なんて一度もしたことないです。日本で働くって考えが頭に全くなかったので。
吉井
そうなんだ。大学卒業後はすぐに海外?
小出さん
はい。フィジーに語学留学で行ってました。
吉井
そこでも野球はやっていた?
小出さん
やっていました。
JICAの野球支援をしてる人に連絡して、その活動に参加しました。
野球文化がない国なので、野球発展事業として自分も試合に参加して、
小さい子と一緒に野球をしました。
吉井
いろんな国で野球やってるんだね。
小出さん
後はミャンマーでも野球経験があります。
ミャンマーの男子代表チームには、日本人の方が長く携わっているんです。
その方と一緒に野球をやった時に聞いたのは、
ミャンマーではベースボール5や女子野球もやりたいということでした。
コロナやデモでその計画はストップしてしまいましたが、
それが収まれば自分も行って協力したいと思ってます。
吉井
私はベースボール5やったことないんだけど、実際やってみてどうだった?
小出さん
ベースボール5は今、WBSCが中心となって色々な国で活動されています。
野球をやる一歩目としてベースボール5はいいと思います。
小さい子供でもできて野球のルールもある程度覚えられるので。野球が発展途上の国で、
まずベースボール5、その後に野球も流行らせることもできるかなと思います。
吉井
なるほど。いろんな国に行って野球に携わる中で心境的な変化はあった?
小出さん
海外で野球をしたり、見たりすると考えはすごく変わります。
日本の女子野球の時はすごい狭い視野でやってたと今では思います。
雰囲気も女子野球独特なものがあって、まわりの目も気にしすぎてしまって、
プレーにも影響が出てしまってたと思います。
吉井
海外の人たちは考え方とかも全然違う?
小出さん
はい。オーストラリアでも野球をやったんですが、全然違う考えがありました。
香港もそうですけど、コーチもそれぞれで考え方や教え方が違うので見てるだけでも本当に面白いです。自分が今までやってきたものを教えようとしても、それが当てはまらない人もいると考えてます。日本の野球は強いけど、日本の野球を海外に伝えれれば良いのかと言われるとそうではないと思います。
吉井
文化の違いもあるしね。
小出さん
そう。文化の違いもあるし、頭の中の構造や考え方も全然違います。
いろんな考え方のコーチとかをみていると、教えることも楽しいと思うようになりました。前までは「教えるぐらいならプレーを」という感じで、自分が教えたいとは考えていなかったんですけどね。
吉井
なんかいいな〜楽しそうだな〜
小出さん
自由で楽しいです!
吉井
私も海外で野球をしたいと思うこともあったけど、英語がしゃべれないこともあって勇気が出なかったんだよね。

女子野球発展途上国に長期的な支援を!!

吉井
最後に女子野球普及への思い聞きたいと思います!
小出さん
女子野球を発展させるには、強いチームだけに焦点を当ててもあまり意味がないのではと思っているので、発展途上のチームの支援に力を入れていきたいです。例えば、マレーシアにも女子野球があり、フィリピンはこの前のワールドカップでいい成績を残したりしています。こういう国の野球をもっと活発にしていくことが女子野球の発展に繋がると考えています。
吉井
日本国内だけではなくて、国外のレベルをあげて行かなければという感じだよね。日本の選手がもっと海外に行けばと思うけど、それがその国の指導者としてハマるかはわからないよね?
小出さん
そうですね。教える側も指導する中でいろいろ経験をしながら、新しい考え方を吸収して成長していければいいと思います。日本から定期的に海外に出て指導できる環境を自分がもっと作っていけたらいいなと思います。
吉井
今日はありがとうございました。
小出さん
こちらこそありがとうございました。

「世界に向けて野球普及活動Vol.1」いかがだったでしょうか?

香港は男女ともに野球が盛んな地域ではなく、野球を行う環境はあまり整っていないということでした。
しかし、英語を身につけることや、様々な国の人や文化に触れることを目的としている人には最適な国ということを知ることができました。

英語圏ではない香港の方が英語が身に付くということは実際にいろんな国を経験したことのある人にしかわからないことですよね。

今回このような取材をする機会があり、小出さんと数年ぶりに会話をしましたが、
海外で様々なことに挑戦し続け、昔より遥かにパワーアップした姿を見ることができました。

私自身も海外で挑戦したいという思いはありましたが、実際に行動する勇気は出ず現在に至ります。

今回の記事で、海外へ行こうか悩んでいる方や、海外で野球を経験しようか迷っている方への
刺激活力発見に繋がり、1人でも多くの方の海外進出・成功を後押しできれば幸いです。

「世界に向けて野球普及活動」次回はオーストラリア編です。

トレーナーの勉強をしながら自身も野球を続ける女子選手に取材を行いました。お楽しみに!!

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