ソフトボールから準硬式への転向 管理栄養士を目指しながら野球を続ける川上さくらの挑戦

スリーボンドベースボールパーク上柚木にて行われた関東地区準硬式野球連盟の全日本大会出場予選会。清瀬杯出場の最後の一枠をかけて、高崎健康福祉大学と日本大学三崎町の試合が行われた。試合は9回表2死から6点を取った日本大学三崎町が8-6で勝利。全国大会への切符を手にした。

惜しくも敗れ、初の全国大会への出場を逃した高崎健康福祉大学。先発した主将の尾形大輝の力投やチャンスを確実にものにする打線の集中力なども目立つ中、チーム唯一の女子選手・川上さくら選手も男子選手に負けじとベンチを盛り上げていた。

先日、関東地区大学準硬式野球連盟では「女子硬式野球準備委員会」が立ち上がり、「女子選手の積極的な受け入れ」を表明している。この予選会では唯一となる女子選手としてベンチ入りした川上選手は、女子準硬式野球の先駆者とも言える。

「準硬が女子選手を受け入れている」と言っても、実際に女子選手がどの様な活動の仕方ができるのか、イメージすることは難しい。

そこで今回は、実際に選手として活躍する川上選手に、

大学準硬式に入部する時に感じていた不安

大学での学業と部活の両立

女子準硬式野球の今後について

などを話していただきました。

【川上さくら(かわかみさくら)】2001年6月20日生まれ、群馬県出身。内野手。
小学校4年生から野球を初め、小学校6年生から高校3年生までの7年間は女子ソフトボールを経験。附属高校から高崎健康福祉大学に進学すると、準硬式野球部で男子と共にプレーすることを選択。先日、関東地区の大学で行われた全日本大会出場予選会では、唯一の女子選手としてベンチ入り。準硬での活動と両立しながら、健康栄養学科で管理栄養士を目指しています。

7年間プレーしたソフトボールからの転向 準硬式入部のきっかけは?

小石
試合、お疲れ様でした。本日はよろしくお願いします。
川上選手
よろしくお願いします。
小石
まず、川上選手ご自身の野球歴を教えてください。
川上選手
小学4年生の時に少年野球を初めて、6年生からはソフトボールチームに入りました。そこから高校まではずっとソフトボールをやっていました。その後、大学1年生の10月くらいに準硬式野球部に入りました
小石
なぜ10月という時期の入部だったのですか?
川上選手
ソフトボールのクラブチームにも入っていたのですが、コロナのこともあり練習がほとんどできない状況でした。もっと練習する時間が欲しかったので、大学の準硬へ参加することを考えるようになりました。
小石
準硬では女子選手はずっとひとりですよね?
川上選手
はい。ずっとひとりです
小石
男子しかいない準硬に入ることに不安はなかったのですか?
川上選手
もちろんありました。もともと大学の準硬式野球には興味があったのですが、男子の部活ということで入りづらくて「やめておこうかな」と思っていました
小石
なるほど。その中で入部を決断したのは何かきっかけがあったのですか?
川上選手
準硬の監督が高校の時の担任の先生だったので、「練習だけでも参加させてもらえませんか?」と相談することができました。それを快諾してくださり、最初は体験の様な形で参加させてもらい、それがすごく楽しかったので正式に入部しました。
小石
実際に男子選手と一緒にプレーをしてみていかがですか?
川上選手
最初はみんな知らない人だし、男子だし、当然やりづらい部分はありました。実際にやってみて、プレーをみていて女子と違った力強さやスピードがあり、自分もそこに追い付かなければという思いで頑張れたのでそこはよかったなと。
小石
男子選手からの反応はどうですか?
川上選手
ひとり高校が同じ子がいて、その子がすごく話しかけてくれました。やっているうちにみんな話しかけてくれる様になり、すごく楽しく部活ができています。
小石
川上さんは高校まではソフトボール部ということですが、ソフトボールから野球に転向しようと考えた時に一番不安だったことはなんですか?
川上選手
一番は投げる距離です。距離も長ければボールも違うので...入部当初はショートをやっていたのですが、全然届かずにワンバン送球でしか投げられなくて、ボールの感覚も全然違うので、腕を振ると叩きつけてしまうというように制御できませんでした。今は感覚もつかんで投げれる様にはなりました。

管理栄養士を目指しながら野球と勉強を両立 準硬式野球部ではどの様な生活を送っているのか?

小石
川上選手が高崎健康福祉大学を選んだきっかけを教えてください。
川上選手
管理栄養士になりたいと思っていたので、その勉強ができるということが一番の進学目的でした。附属校ということもあり大学が身近にあったので、健大の健康栄養学科を選びました。
小石
なるほど。進学の際には部活のことは頭になかったのですか?
川上選手
はい。それはなかったですね。
小石
将来的にはどの様な仕事をしたいと考えていますか?
川上選手
大学を卒業できれば栄養士になれるので、その後、さらに勉強して国家資格である管理栄養士の資格を取り、病院で働くことを考えています。
小石
準硬での活動と管理栄養士のための勉強との両立は大変だと思いますが、川上選手の実際の生活イメージを教えてください。
川上選手
全体練習は朝練が基本なので、朝は練習、そこから授業にいって、夜はバイトや自分の時間というイメージです。月曜日だけは午後の練習がありますが、残りの平日は朝練習なので、「部活に時間を取られすぎて勉強の時間がない」ということにはならないです。
小石
「学業と野球の両立」ができることが準硬の理念だとはよく聞きます。実際に活動してみてもその様に感じるということですね。
川上選手
そうですね。実際にやるまでは『大学で野球をやる』となると野球専念というイメージがありました。今の準硬だと、勉強もできて野球もできて、バイトもできるので、そこが準硬に入って一番良かったと感じた部分です。
小石
男子と一緒にプレーをしてみて、ここは勝てないなと思うことはありますか?
川上選手
これは私には無理だなと思うのはバッティングです。男子選手はみんな思いっきり打つとネットに直撃するまで飛ばすのですが、私はどれだけ頑張って打っても内野を越すことが精一杯なので...パワーの部分は勝てないのかなと。
小石
今日の試合を観ていると、投手は130キロ後半をコンスタントに出していましたが、スピード感の部分はどのように感じていますか?
川上選手
確かに速い球を投げる投手は多いですが、打席で「すごい速い」と感じることはないです。ただ、ソフトボール出身の私にとって、スライダーのような横の変化は今まで見たことがなかった変化球なので、そこが一番難しい部分だと感じています。
小石
逆に、ここは男子にも負けないという部分はありますか?
川上選手
「負けない」とは言えないですが、守備は頑張れば同じくらいできるようになるのではないかなと思います。もちろん、男子選手は振りも速くて打球も速いので、怖い気持ちはありますが...

川上選手が男子選手とともに活動することについて、高崎健康福祉大の磯貝監督は「今まで『女子だから』と思ったり、気を使ったことは一切なくて、危ないから別メニューにするということも一切していません。本人はしんどいかもしれないですけど、しっかりやってくれて、男子と一緒のメニューについてきてくれています。」と話す。

また、本人が「守備は同じくらいできるかもしれない」と話すように、試合前のシートノックでは二遊間という他の選手に合わせた動きが多いポジションで、男子選手たちに劣らない動きをする川上選手の姿が見られた。

「一緒にプレーする中でコミュニケーションを」 後輩選手に向けたメッセージ

今年2月、関東地区大学準硬式野球連盟では女子準硬式野球準備委員会が発足し、女子選手の積極的な受け入れを表明。関東地区連盟・山田理事長は「今は関東全体で女子の連合チームを作って活動をしてみて、次は各リーグで1チーム、最終的には各大学という様に徐々に女子選手が増えていけば。」と話し、関東地区の女子選手、経験者のマネージャーを集め第一回の練習会が行われた。実際にその一員として参加した川上選手に、『準硬×女子野球』について話していただいた。

小石
女子準硬式野球準備委員会が設立されましたが...
川上選手
連盟をあげて、女子のチームを作ろうとしてくれていることはすごくありがたいです。チームには所属していますが、男子選手との競争に勝って試合に出ることはなかなかできないので。連合チームとして女子のチームがあれば、女子選手の活躍の場が拡がると思うし、チームを作ることによって、準硬式のことをしてもらう機会も増えると思うので、ありがたいですね。
小石
先日の初練習を終えてみての感想をお願いします。
川上選手
まだ1回しか練習ができていないですが、雰囲気とかはすごくよかったです。技術とかはそれぞれ違うと思いますが、まずは楽しくできたらということが一番だと思います
小石
大学準硬式を考える女子選手に向けて、何かアドバイスはありますか?
川上選手
周りが全員男子ということがほとんどなので、入りづらいとは思うのですが、いざ入部して一緒にプレーをすれば、選手も声をかけてくれたり、会話も増えて楽しいという気持ちの方が大きくなると思います。見学や体験ではお互いにコミュニケーションを取りにくいこともありますが、一緒にプレーする中で解決していくことだと思うので、まずはやってみて欲しいなと思います。
小石
なるほど、プレーをすればコミュニケーションは取れるようになると。それでは最後に、後輩の女子選手に向けてメッセージをお願いします!
川上選手
はい!準硬式を知らない人や、やったことのない人、ソフトボールや硬式からの入部を考える人もいるとは思います。ボールや距離の違いはありますが、やってみるとすごく楽しいし、勉強との両立もできるので、ぜひ入って欲しいなと思います。今は女子選手が少なくて、関東全体でもギリギリ1チーム作るのが難しい人数ですが、新たに入ってくれたら連合チームとして活動できるので、ぜひ入って一緒に試合ができればと思います!!

大学準硬式に限らず、女子選手が男子選手との競争に勝って出場機会を得るということは難しい。女子選手が男子選手の中に混ざって活動することを決意する際、試合に出られないことも覚悟しなければならないのが今までの状況であったが、このような取り組みがあれば、女子選手が輝けるチャンスは拡がる

川上選手を高校時代から知る磯貝監督は「この取り組みが始まるとなった時に『ぜひ中心としてやってみなよ』と言うと、『本当ですか、嬉しいです』とやる気になって取り組んでくれています。高校の時はどちらかと言うと社交的な性格ではなかったので、準硬での経験やこの様な取り組みを通して、本当によく成長しているなと思います。女子野球のパイオニアになって欲しいです。期待しています!!」と話す。

山田理事長も「学生の学生による学生のための準硬にしたい」と言う様に、学生による柔軟な運営で、様々なことを経験できることも準硬のストロングポイントの一つ。女子選手の拡大を目指す準備委員会も学生委員が中心となって行っている。

準硬×女子野球。相乗効果で更なる発展に期待です!!

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