女子野球選手100人アンケート守備部門1位 埼玉西武ライオンズレディース・岩見香枝

「直球」「コントロール」「変化球」「長打力」「バットコントロール」「走塁」「守備」の計6部門で100人の女子野球選手にアンケート調査を行いました。

今回は守備部門で最多票を獲得した埼玉西武ライオンズレディース・岩見香枝選手にお話を聞かせていただきました

【岩見香枝(いわみかえ)】
1993年2月11日生まれ。静岡県出身。

[経歴]
埼玉栄高校(ソフトボール)
日本体育大学(ソフトボール)
埼玉アストライア(2015)
京都フローラ(2015途-2016)
埼玉アストライア(2017-2018)
愛知ディオーネ(2019)
埼玉西武ライオンズ・レディース(2020-)

[日本代表歴]
2021年 第9回女子野球W杯(開催延期)

守備の名手として知られる岩見選手に、セカンドとショートでの意識の違い、守備強化に向けたトレーニングや練習時の意識、来季以降の指導者としてのチームづくりについてお話しいただきました。

「なんでも取ろうという意識は無くなった」西武でセカンドに転向後に

小石
今日はよろしくお願いします。
岩見選手
よろしくお願いします。
小石
まずは守備部門1位の感想をお願いします。
岩見選手
選手間で投票して1位ということが嬉しいです。グラウンドで一緒にプレーしている選手から票が入るということ以上に価値があることはないと思います。本当に野球の技術を見て評価していただいたなとは思うので、本当に嬉しいです
小石
野球のプレーの中だと守備に一番自信を持っていますか?
岩見選手
別にバッティングに自信がないわけではないですが、一番は守備です。バッティングは長打を打つバッターではないですが、場面に応じたバッティングができることが売りだと思っています。打撃は率を残したりバンバン長打を打つバッターが注目されて当然だと思うので、そこで注目されたいという欲はないんですよね。ホームランを打ちたいとか、中軸を打ちたいという欲もないです。ただ、場面に応じた打撃という面では自信がありますね。
小石
本職はセカンドですか?ショートですか?
岩見選手
女子プロに所属していた時はずっとショートをやっていて、ライオンズ・レディースに入って初めてセカンドをやっています
小石
ショートからセカンドに変わって違いを感じる部分はありましたか?
岩見選手
取って投げるだけと考えたらどのポジションを守っても私は変わらないとは思うのですが、ポジショニングやベースカバーなどの「守り方」という面ではセカンドの方が複雑で難しいなとは感じています
小石
女子野球の内野守備はどのようなことが重要となりますか?
岩見選手
女子野球はライトゴロがあるので、三遊間の強化が大事だと感じています。どうしてもヒットゾーンが三遊間に集まって来る傾向にあるので、そこを固めた方が守備力は上がってくるのかなと感じています。内野守備は左方向を強化すると守備的な“得点力”は上がるのかなと思います。
小石
その中でセカンドとしてどのような意識が必要になりますか?
岩見選手
ライトゴロがある分、1.2塁間のライトに任せる打球はすぐ任せてしまうことが女子野球ならではのことだと思います。そうなると必然的に強化するべき方向の二遊間の打球に強くなるので、そういう意識はできましたね。なんでも取ろうという意識がセカンドを守ってからはなくなりました
小石
そこがショートとは違う部分でもあると。
岩見選手
ショートを守っているときは、両方が完全なヒットゾーンなので、なんでも取ってやらなきゃという意識が凄くありました。セカンドは任せればライトゴロになるので、そこが違うところです。
小石
1.2塁間の打球はファーストとの連携も大切になりますよね?
岩見選手
そうですね。基本的にはファーストは出れるだけ出ちゃっていいと思います。ファーストが目一杯出て取れずに、セカンドがとったとしたらピッチャーがちゃんとベースにいます。ベースカバーができないとファーストは思い切って出れませんが、そこのレベルまではきているのかなと思います。
小石
守備において最も大切にしていることは?
岩見選手
1歩目がすごい大事だと思っています。最短かつアウトにできる秒数で打球を追うためにどう1歩目を出すかという究極のところに今はきています
小石
と言うと?
岩見選手
ただ追いつければいいという次元ではなくて、追いつくことは当たり前で、その打球をアウトにするためにどういう足跡で、最短でボールにいけるかということをずっと追求しています。完成というのは野球にはないですが、だんだん自分が思っている通りに取れて、投げれてアウトにできるようにはなってきました。
小石
理想の動きに近づいていくに連れて1歩目の重要性を再認識していると。
岩見選手
はい。1歩目の“出す位置”も大事なのかなと思っています。内野手も360°動けないといけないので、1歩目の出す位置が10センチでも変わっただけで、ボールが取れるか取れないかの差が生まれます。なので、1歩目の出す位置ということはすごく意識しています。
小石
守備でプレッシャーを感じることはありますか?
岩見選手
普通に試合している分にはそんなにないのですが、最終回裏の同点でランナー3塁にいるというような場面はありますよね。そういう時はドキドキするという精神面はあります。
小石
その時はどのように気持ちを落ち着かせますか?
岩見選手
ポジショニングをどうするかということを考えます。“張る”じゃないですけど、どういう確率でボールがくるのかなということを意識を強く持って考えています。きたらどうしようとかではなく、ここにくるだろうなという想定をして自分を落ち着かせているなと思います

広島カープ・菊地選手とも練習する中で確立した練習方法

小石
広島カープの菊池選手とも一緒に練習しているみたいですが...
岩見選手
はい。菊池さんと一緒に練習するようになってから特に1歩目の位置を強化しています。1歩出す前に左足を踏んでしまったりとか、余計な動きが入っていた時期があったので、それを直してきました。身体作りの面でも体幹とバランスを融合させたようなトレーニングを教わってからだいぶ守備が変わったので、そこは今でも継続して意識して練習を続けています。
小石
それはどのようなトレーニングですか?
岩見選手
例えば、ベンチプレスの台をバランスボールにし変えてバランスをとりながら力を発揮するというトレーニングであったり、ウォーターバックという水が入っていて中で動くものを使って水が揺れないような軸を作ったりとか、ジャンプしたり、一本のロープの上を歩いてバランスをとりながら体幹部を使うというような道具も使いながらトレーニングをやっています。
小石
他にもやっていることはありますか?
岩見選手
小さい身体でどのようにに大きい力を出すかということを意識しています。本当に野球につなげる動作を強化するために、このトレーニングの時はここの筋肉を使っているとか、筋肉の部位分けをしたトレーニングをしています。
小石
守備練習はどのような練習を行っていますか?
岩見選手
年間通して行うのはハンドリングの練習とひたすら打球を受けることです
小石
ハンドリングの練習というのは?
岩見選手
最初は人にトスで投げてもらったものをショートバウンドでとるところから初めて、だんだんその応用をしていきます。ノックで打ったものを足は固定してハンドリングだけで処理したり、その距離を伸ばしたり、打球を強くしたり、バウンド数を多くしたりして難しさを徐々に変えます
小石
打球を受ける練習時に意識していることはありますか?
岩見選手
いい状態の受け方でその数を増やしていくことです。ただ取るとかではなく、「この位置で絶対とる」「このバウンドで絶対とる」という目標を決めてやっています。
小石
それは日ごとに目標を決めているのですか?
岩見選手
そうですね。「逆シングルで全部とる」とか、「全部前に出てショートバウンドで取る」とか、「取ったらワンステップで全部投げる」とか、課題によって細かくパート練習というものはしています

「指導者としては打力で破壊するチームづくりを」岩見選手の来季の目標

小石
来年から指導者になりますがどのようなチームを目指しますか?
岩見選手
勝利主義にはなりたくないです。皆さん守備のチームにしてくるだろうと思っているかもしれませんが、どちらかというと振り込んで、打力で破壊していくようなチームにしていきたいなと思っています。イメージとは真逆だと思うのですけど...
小石
そうですね。守備のチームだと思っていました...
岩見選手
やっぱり打力がないと勝ち進んではいけないので。ピッチャーがものすごくよければいいのですが、高校生で完成形のピッチャーはいないと思うので、そうなると打力に頼らなければいけない試合も出てくると思うので、守備もそれなりにはしごきますけど、それ以上に振り込んで、破壊していくようなチームを計画しています。
小石
打撃のチームだからこそ、守備で「ここだけは」という部分はありますか?
岩見選手
1イニングに2つの失策を起こさないということはチームのモットーなのかなと思っています。四死球・長打・失策の3つを対象にしてこれを1イニングに2つ出さないということが守備の目標です
小石
確かに2つ出れば高確率で失点となりますね。
岩見選手
はい!2つ出れば95%くらいの確率で失点だと思います。ピッチャーからしたら長打1本はエラーみたいなものなので、シングルは全然いいですけど。3連打を浴びることはそんなにないと思うので...数字で目標を立ててあげることでわかりやすいかなと。なんでも数字にしていきたいと考えています。
小石
守備強化のためにやっておいた方がいいことはありますか?
岩見選手
意外に守備で大事なのはサッカーだと思います。なぜかというと、足をすごく動かすということと切り返しの動きや予測する動きというものもあるので。冬場はサッカーをやって、そこで足の動かし方を覚えるのが大事なのかなと思っています。ボールを蹴る時も軸足があってボールとの距離を取るということもすごく繋がっているなと。
岩見選手
野球をやるだけで上手くなろうという考えが私には全然ないので、サッカーをやることはアドバイスになるかなと思います。守備が上手い人は大体サッカーは上手ですね。
岩見選手
守備練習の中で言えば、毎回同じ足の幅、身体・足・ボールの距離を一定にしてという意識での基礎練が上手になる道だなと思います。やっている練習はみんな大体同じだと思うので、練習の中身と意識がすごく大事だと思います。
小石
来季の目標をお願いします。
岩見選手
毎年言うのは失策がゼロ。打撃で言うと得点圏打率をあげるということが目標です。
小石
女子野球界への思いをお願いします。
岩見選手
いずれは12球団全てが女子チームを持つことがみんなが考える目標でもあると思います。そこに向けて今の世代がどう女子野球の魅力を伝えていくかということが大事だと思うので、野球の技術をあげることはもちろん、どうに女子野球を発信していくかということが大事になっていくと思うので、選手もスタッフも、カテゴリーも関係なく、頑張りたいなと思います!!

2022年創部の静清高校女子硬式野球部の監督就任も決定している岩見選手。西武ライオンズレディースの選手として守備を追求していき、女子野球の指導者として打力重視のチームづくりをしていく岩見選手の来季の活躍に注目です!!

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