女子野球選手100人アンケート2022 守備部門1位 埼玉西武ライオンズ・レディース 岩見 香枝

「女子野球選手100人アンケート2022」として、「直球」「コントロール」「変化球」「長打力」「バットコントロール」「走塁」「守備」「強肩」の計8部門で現役女子野球選手100人にアンケート調査を行いました。

各部門で1位を獲得した女子野球界トップレベルの9選手(強肩部門は同率で2名が1位)に今シーズンを振り返っていただきます

本記事では守備部門で2年連続となる最多票を獲得した埼玉西武ライオンズ・レディースの岩見香枝選手にお話を聞かせていただきました。

【岩見香枝(いわみかえ)】
1993年2月11日生まれ。静岡県出身。

[経歴]
埼玉栄高校(ソフトボール)
日本体育大学(ソフトボール)
埼玉アストライア(2015)
京都フローラ(2015途-2016)
埼玉アストライア(2017-2018)
愛知ディオーネ(2019)
埼玉西武ライオンズ・レディース(2020-)
静清高校女子硬式野球部監督(2022-)

[日本代表歴]
2021年 第9回女子野球W杯(開催中止)
2022年 第3回女子野球アジア杯(最終候補/開催時期未定)

高校女子野球の監督と埼玉西武LLの選手としての活動を両立 二刀流での1シーズン目を終えて

小石
まずは、守備部門1位に選ばれた感想をお願いします。
岩見選手
今年はヴィーナスリーグでもほとんど出れず、その他の大会と合わせてもあまり試合に出ていなかったので驚きです。
小石
今年からは静清高校の監督にも就任し、環境面でも大きく変わったと思いますがどの様な1年でしたか?
岩見選手
指導者として高校生に野球を教える中で、改めて野球の深さを感じ、野球の見方も変わった年でした。そういったことが自分自身のプレーにも活かすことができたのかなと思っています。
小石
監督と選手の両立は大変ではなかったですか?
岩見選手
そうですね...そこまで大きく変わったことはなかったと思います。ノックやバッティングなどの基礎的な練習は高校生とも一緒にやることもできるので。ただ試合に出る機会は減ってしまい、実践感覚だけは去年までの3分の1になってしまいました。
小石
実践が減ってしまった中で、どの様な練習をすることで対応したのですか?
岩見選手
クラブ選手権や全日本選手権に出てトップレベルのスピード感に対応していくために、スピード系のトレーニング、ビジョントレーニングなどは増やしました
小石
そういったトレーニングをして大会に臨んだ中で、ご自身のプレーとしてはいかがでしたか?
岩見選手
今シーズンは10試合くらいしか出ていませんが、特に凄く何かが成長したとか、逆に何かが凄く落ちてしまったということはありませんでした。私の中では問題なく動けていたのかなと思います。落とさずに維持できたので、やってきた練習も間違っていなかったのかなと。
小石
また来年以降、選手と監督の二刀流を続けていく中で、選手としてはどの様な活躍をしていきたいですか?
岩見選手
現役である以上は高みを目指していて、特に守備の面で評価が下がることはあってはならないというプライドを持っています。来年だけではなく、続ける以上は記憶に残るようなプレーを常にし続けたいなと。師匠の菊池涼介選手も10年連続でゴールデングラブ賞を取っているので。
小石
現役は『あとどのくらい』と考えることもあるのですか?
岩見選手
そうですね...特にいつまでと決めてはいませんが、日本代表にしてもライオンズにしても上手く世代交代をするにはタイミングが大事だと思っているので、そんなには長くないと思っています(笑)
小石
今年の全国大会での動きを見ていると、まだまだ若手選手には負けていないと思います。岩見選手ももちろんその自信はありますよね?
岩見選手
そうですね。ただ、諦めがつけばスパッとやめます。

1年生だけのチームで全国制覇の横浜隼人を最終回まで追い詰める 静清高校女子硬式野球部の1年目の活動を終えて

小石
静清高校女子硬式野球部の監督に就任して1年生だけのチームでの1年目。チームとしてはどんな1年間でしたか?
岩見選手
4月はボール回しも上手くできない、バッティングも外野の頭を超える打球はほとんどでない、バントもままならないという状況でスタートしたなかで、「どれだけ成長するかな」と楽しみにしていました。喝をいれることもまだまだありますが、夏の大会が終わってからはスコアがガラッと変わって来たので、ここまでは計画通りに進んでいます(笑)
小石
スコアはどのように変わってきたのですか?
岩見選手
夏大までは5点取っても6点取っても終盤にひっくり返されてしまうことが多くありました。「野球は守備から始まる」ということは4月からずっと教えてきましたが、夏大後からは守備の練習量を凄く増やして、ロースコアのゲームができるようになりましたね。
小石
夏の全国大会が選手の意識が変わる大きなきっかけになったと。
岩見選手
そうですね。2回戦では横浜隼人に7回まで勝っていて一瞬夢を見たと思うんですよ。でも最後にひっくり返される展開は読めていたので、それがあの時の実力だなと。その事実・現状を伝え、選手も分かってくれたので、そこから守備に対する意識も変わりました。自主練でもバッティングばかりやっていた選手が守備をやるようになったり、少しずつ練習の中身も変わっていますね。
小石
1年生だけのチームで全国制覇の横浜隼人相手に7回まで追い詰めた試合でしたが、自信よりも悔しさや反省といった気持ちの方が大きかったのですか?
岩見選手
そうですね。「今の実力でもここまで戦えるんだ」「この冬を越えれば...」と自信になった部分はあると思いますが、ちゃんと冷静に課題としてしている部分もしっかりあると思います。
小石
ここまで想定通りとのことでしたが、来年はどの様な戦いができると想定しているのですか?
岩見選手
大会でどこまで勝ち上がるとかは分かりませんが、1点差のゲームは常にできるのかなと思っています。1点差で勝つか負けるかは2月以降に実践をしていく中でわかることかなと。こちらの計画では大差で負ける試合は減ってくると思っています。
小石
監督として、来シーズンの意気込みをお願いします。
岩見選手
来年の目標としては優勝しかないですが、まずはコンスタントにローゲームで試合が進むような安定感のあるチームを作っていきたいです。ただ優勝ではなく、中身のあるチームを作りたいなと。そして3学年揃うまでは組織を作っていくということも大事にしたいです。

高校生から日本代表まで幅広い女子野球を見た岩見選手が感じた2022年の女子野球

小石
日本代表レベルから高校生まで幅広く女子野球を見ていた中で、今年の女子野球はどの様な1年でしたか?
岩見選手
そうですね...新しいチームも増えてきて、いい意味で選手がバラついて所属しているので、色々なチームが勝ち上がってくる下克上の様な世界になってきたなと。今まではチームによって差がありましたが、その差が埋まりつつあるので、面白くなってきているなと感じます。
小石
確かに今年一気に変わってきた感じはありますね。
岩見選手
そうですね。来年からはジャイアンツもできるので、社会人に関してはまたその層が厚くなるのかなと。高校生も大人に太刀打ちできるレベルなので、高校生と社会人の交流戦みたいなものがあると面白いのかなとも思います。
小石
全日本選手権での神戸弘陵など、高校生も社会人相手に負けてはいないと感じるシーズンでもありましたね。埼玉西武LLは来季に向けて、メンバーの入れ替わりもありますが...
岩見選手
確かに退団選手も多く、苦しい部分もありますが、悪い部分だけではないと思っています。若手が凄く活躍できる場が増えると思うので、『新しいチームができた』と思っています。
小石
その中でどの様に戦っていきたいですか?
岩見選手
ベテランがどれだけフォローできるかにかかっていると思います。若手がメインで試合に出ていくと思うので、その選手たちを引っ張っていくベテランがいて、いざというときに代打などでしっかりと結果を残すというような。若手に対して、いかに指導とフォローができるかも大事だと感じています。
小石
それでは最後に、岩見選手個人の来年の意気込みをお願いします。
岩見選手
試合数も少ないので選手としての目標は凄く難しいのですが、出番がきたタイミングでしっかりと結果を残したいです。出場は少ないとしても、チームにとってプラスの存在で1年間プレーできたらと思います。

守備の名手として長年活躍し、今年からは静清高校女子硬式野球部の監督としての新たなスタートも切った岩見選手。監督と選手の二刀流での活躍は簡単なことではないと思いますが、来年も選手として好守を連発する岩見選手の姿を見れることに期待です。

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