女子野球選手100人アンケート2022 変化球部門1位 ZENKO BEAMS 田中 露朝

「女子野球選手100人アンケート2022」として、「直球」「コントロール」「変化球」「長打力」「バットコントロール」「走塁」「守備」「強肩」の計8部門で現役女子野球選手100人にアンケート調査を行いました。

各部門で1位を獲得した女子野球界トップレベルの9選手(強肩部門は同率で2名が1位)に今シーズンを振り返っていただきます

本記事では変化球部門で2年連続となる最多票を獲得したZENKO BEAMS・田中露朝投手にお話を聞かせていただきました。

【田中露朝(たなかあきの)】
1996年6月13日生まれ。奈良県出身。

[経歴]
福知山成美高校
尚美学園大学
ZENKO BEAMS(2019-)

[日本代表歴]
2016年 第7回女子野球W杯
2018年 第8回女子野球W杯
2021年 第9回女子野球W杯(開催中止)
2022年 第3回女子野球アジア杯(最終候補/開催時期未定)

「球種を増やし、緩急を使ったピッチングに」今シーズンを振り返って

小石
まずは、変化球部門1位に選ばれた感想をお願いします。
田中投手
私の持ち味であるスライダーを選んでもらえて、まずは素直に嬉しいです。今年は公式戦でもスライダーで空振りをとったり、打たせてとったりということができていたので、そこをみんなが見てくれていたのかなと思っています。
小石
ヴィーナスリーグでもほとんどの試合で投げていたような印象もありましたが、今年1年通してのピッチングはどうでしたか?
田中投手
ヴィーナスリーグでは半分近くは先発していましたが、1年通してだと自分が納得のいくピッチングではなかったです。やはり大きな大会で負け投手となることが多かったので、間違いなく悔いは残っています。
小石
昨年はスライダーと直球の2球種で勝負していて、今年はカーブも使っていくとのことでしたが...
田中投手
今年はカーブやスプリットも使ってみたりと球種を増やした1年でした。ずっとスライダーばっかりだったのですが、新しい球種や緩急も上手く使えて、よりスライダーが活きたのかなと思います。
小石
去年よりもパワーアップしたピッチングができたと。
田中投手
そうですね。真っ直ぐとスライダーだけだとどっちかに張られてしまうので、カーブのような遅い球を使えたことが有効だったのかなと思います。そして球種が増える分、「考えてやる」ということも増えたと思います。キャッチャーにも配球は任せますが、自分でもバッターの振りや表情を見て、「ここは違う」とか「こういう球種の方がいい」と考える機会は去年以上にありました。
小石
今年からはZENKO BEAMSの監督に日本代表監督でもある中島さんが就任しましたが、何か教わったりすることも多かったのではないですか?
田中投手
そうですね。中島監督も現役時代はサイドスロー気味で投げる投手だったので、「カーブはカウントを取れなくてもいいから低め」というような、やっていたからこそのアドバイスをもらっていました。

「交流や技術交換を増やすことで更なるレベルアップを!!」

小石
日本代表合宿などにも参加されていますが、そこでは何か教わったり、教えたりということはありましたか?
田中投手
そうですね。私よりも球種をいっぱい持っている人たちがいるので、シュートとか、スクリューとか。そういう人たちには聞きにいきます。あとは投げるときに何を意識しているかとか。阪神の植村さんには肩甲骨の動かし方について教わりました。
小石
田中投手に投票したコメントを見ていると、IPU環太平洋大学の佐合投手からは「同じサイドスローとしてあのスライダーには憧れます」というコメントがありましたが...
田中投手
嬉しいです。IPUだと岡山なので、あまり試合をしたことは無いのですが、それでもそう思ってくれているということが嬉しいですね。
小石
同じサイドスローというところでは、ゴールドジムの玉城投手も今回のアンケート記事を出した際に、Twitter上で田中投手のことを絶賛していました。他のチームの後輩投手たちとも交流したり意見を交換したりする機会はあるのですか?
田中投手
それが本当になくて。アンケートを見て「そう思ってくれているんだ。」と初めて知りました。合同練習とかをする機会もあまり無いので。そういう意見をもらえると、「もっとやらなきゃな」と刺激にもなりますね
小石
母校の福知山成美のエースの伊藤さんは「田中露朝さんからアドバイスをもらいました」と聞いたのですが...
田中投手
私が直接あって指導したわけでは無いのですが、私の大学の先輩で現在福知山成美のコーチをしている川口さんから「このピッチャーはどうしたらいい?」というような相談をもらったので、少しアドバイスをさせていただきました。
小石
どのようなアドバイスだったのですか?
田中投手
インステップが凄かったのですが、「完全に直せ」ではなく、「半足分くらいずらしてみたら」というような話であったり、「身体の内側で投げた方が力が入るよ」というアドバイスはしました。サイドスローは身体の外で投げたり、開きすぎてしまうと、力が入らなかったり、怪我をしてしまったりということがあるので
小石
サイドスローならではの悩み、ありがちなことという部分ですね。
田中投手
そうですね。サイドスローの悩みはやっぱり抜ける球が多いことだと思います。身体の開きが早いとリリースが一番遠くなってしまい、手首が寝て、ボールが右バッターの方に向かっていってしまいます。私自身も課題だと思っていて、サイドの難しさというところなのかなと思います
小石
女子野球界全体で、もっと交流であったり、技術交換や意見交換をしたりということができればいいですね。
田中投手
そうですね。先日、里さん主催のイベントに参加したのですが、交流が本当に大事だなと感じました。思っていることがあってもなかなか言う機会はないなと。イベントでは小さい子供たちも質問をしてくれたり、女子野球のことを色々と考えていることが分かったので嬉しかったですね

YouTube配信やSNSでの発信など、注目度も上がることとなった2022年の女子野球

小石
女子野球界全体を見ると今年はどんな1年だったと思いますか?
田中投手
今年は配信だったり、メディアに出ることが例年よりも多かったなと感じました。各チームもYouTubeやSNSにも力を入れて発信してくれていたので。ジャイアンツも女子チームができて大々的に発信してくれているので、そういった発信の部分が今年は大きく変わってきたなと。
小石
ZENKO BEAMSさんも甲子園で試合をしたり、そういった部分でも色々と変化がありましたね。
田中投手
そうですね。私は関西人なので小さい頃から阪神を甲子園で応援していましたが、女の子の自分がマウンドに立てるなんて思っていなかったので、本当に楽しむことができました。いい思い出になりました。甲子園で試合ができるというようなことが1回で終わるのではなく、今後当たり前になって欲しいなと思いました。今年は東京ドームでの試合もあったので、甲子園や東京ドームを使わせていただける頻度が増えればいいなと。
小石
今後、女子野球界をもっとよくしていくためにはどのようなことが必要だと思いますか?
田中投手
里さんがやってくれたようなイベントや交流ということも大切ですが、まずは私たち自身が楽しんでやっているところを周りの人に見てもらうことだと思います。活躍している女性がたくさんいることを知ってもらえたら、環境ももっとよくなっていくかなと。その中でもZENKO BEAMSは企業チームなので、仕事もしつつ、野球もしっかりとやっていけば周りの人の理解も得られると思います。企業チームらしく、楽しみながらも一生懸命やることが大事なのかなと思います。そして、野球をみんなで盛り上げていきたいです!!
小石
それでは最後に、来シーズンの意気込み・目標をお願いします。
田中投手
今シーズンはやはり悔しい思いをしたので、1つでも多くチームの勝利に貢献できるピッチャーになりたいと思います。来シーズンは中島監督を胴上げします!!

大学時代には2度の世界一を経験し、現在も女子野球界のトップを走り続ける田中露朝投手。ZENKO BEAMS主将・エースとしての活躍はもちろん、来年開催が見込まれるアジア杯やW杯での日本代表としての活躍ぶりにも注目です。

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