【四国編】2022年の女子野球を振り返って 〜高知中央高校監督・西内友広〜

『2022年の女子野球を振り返って〜四国編〜』は、高校3年間を高知県の室戸高校で過ごした久保夏葵が取材・執筆を担当します。室戸高校時代の監督であり、私の野球人生を大きく変えて下さった指導者でもある、高知中央高校の西内友広監督にお話を聞かせていただきました。

ルビーリーグのスタートや、新たな女子野球チームの誕生、女子野球に関するイベントの開催など、この1年間で様々なことが行なわれた四国地方。その中で、現状や課題、他の地域との違い、今後についてお聞きすることができました。

久保
2022年の四国の女子野球はどのような1年でしたか?
西内監督
今年からルビーリーグがスタートし、少ないところでも5試合、多いところでは10試合くらい公式戦を増やすことができました。それによって勝ち負けを争う試合が増えたということが良かったと思います。やはり公式戦なので勝ちたいというモチベーションはあるのかなと。
久保
四国地方として課題に感じた部分はありましたか?
西内監督
中四国リーグ全体として、上のレベルを目指しているチームが少ないことは課題かなと。他の地域ではトップレベルのチームが争い、試合の勝ち負けによって次の取り組みを変えていくということでレベルアップしていっていると思うので。
久保
今後、中四国でも上を目指すチームを増やすためにはどの様な取り組みを行っていきますか?
西内監督
とりあえず来季からは1部・2部・3部と分けてリーグ戦を行います。そうすることで1部にいきたいと思う人たちは増えますよね。入れ替え戦もしたりして、勝ちを意識したリーグ戦にしていきたいです。
久保
企業が運営するチーム『10Carat Express』が高知に誕生しました。これから四国にも企業チームが増えたりするのではないかと思うのですが...
西内監督
色々なチームが増えれば野球を続ける子も増えて、女子野球の発展のために強いチームが強くなっていくことも大事だけど、それだけではだめですよね。やめる子を増やす理由にもなってしまうので...野球を続けたい上手な子にとってのいい環境を作ることと同時に、そうではない子達も楽しく続けられる環境を作っていきたいですよね。
久保
確かに上手い選手だけがやりやすい環境ではダメですよね...
西内監督
女子野球はみんなが目指している最終ゴールがバラバラなので、監督や運営側としてはどこを目指すべきなのかなと。高校は高校選手権、大学は大学選手権があるからいいけど、それよりも上の人たちは特に難しいと思います。クラブ選手権だとチームごとの差が大きいので。
久保
ヴィーナスリーグでもあまり練習ができていなくて「趣味」として野球をやりたいチームもあれば、「勝つ」ことに拘ってやっているチームもあって、そこは分けて試合はしているのですが、その中でもまだ差はある様に感じます。
西内監督
そうなんだよね。中四国は特にその差が激しいから、これをどうにかしないといつかは発展が止まるよね。ただ今はやっている自分たちだけで評価しているから、女子野球とかは関係なく、高校野球ファンやプロ野球ファンというような“野球ファン”に評価してもらえればなと。「これはレベルの差がありすぎるから違うんじゃない?」というように。やっている本人たちだけでは分からないことも多いので。
久保
SNSなどの発信を見ていると、高知では野球教室よりも野球を通じた交流を行っているという印象を受けたのですが、それも周りの人に見てもらいたいという様な意図があったのですか?
西内監督
女子野球をやる子を増やすのは簡単だけど、見る人を増やすことは難しいなと。野球教室は野球をやる人を増やす目的で、交流は見る人や応援してくれる人を増やしたいという思いです。今は試合をしても観客が全然いないので...ただ選手によって「いい球場でやりたい」「小さい球場で観客を満員にしたい」「やれればそれでいい」など意見は色々なので、どういったことが最高の状況なんだろうと考えますね。
久保
イチローさんの試合で観客が凄かった一方で、東西対抗戦や大学選抜の試合などは全然観客がいなかったと聞きました。東京ドームや甲子園で試合をしたいとは思いますが、観客が多い中で試合をしてみたいとは思いますね。
西内監督
そうだよね。今は観客がいないから自分たちで盛り上げているだけだもんね。自己評価ではなくて、観客が多い中で1つのプレーにどれだけ拍手があるかとか、どれだけ声援があるかという中でプレーしてみたいよね?
久保
そうですね。やっぱり観客がいて盛り上がる中でやりたいなと。それでは女子野球をもっと盛り上げていくために、四国地方としての来年以降の意気込みをお願いします。
西内監督
四国の高校が勝ち上がって、甲子園や東京ドームで試合をすることで盛り上がるのかなと。高校生が頑張って決勝の舞台に立っている姿を見せられれば中学生も野球を続けるし、高校卒業後も大学やクラブチームのどこかで野球を続けてくれると思うので。女の子が本気で野球やっている姿を見せられれば、その本気度は野球をやっている子には伝わると思います。みんなで上を目指して、色々な高校が頑張れば良い結果に繋がっていくのかなと思います。

実際にお話をお聞きし、四国地方の女子野球の現状を知ることができました。私が高校生の頃とは環境も大きく変わっており、羨ましく感じる部分もありました。まだ十分とは言えませんが、女子野球を続けていける環境は増えてきているように感じます。

ただ、西内監督がおっしゃっていたように、「見る人や応援してくれる人を増やすこと」がとても大切だと感じました。甲子園や東京ドームで試合することができた次のステップとして、たくさんの観客の中で試合をすることが目標になっているように感じます。1人でも多くの人に女子野球の良さを見てもらい、応援してもらえるような取り組みをしていくことが今後、必要なことだと思いました。

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