
九州ハニーズ監督 宮地克彦

ーー今年の九州地方の女子野球はどんな1年でしたか?
高校3つを含めたわずか4チームではありますが、九州リーグをスタートすることができました。ホークスも女子野球を応援していくということは仰ってくれていてはいた中で、九州リーグのスタートと九州ハニーズの誕生は九州で女子野球が活性化する1つのきっかけになったのかなと思います。
元々九州には神村学園という全国で初めて女子硬式野球部を立ち上げた高校があったので、大学生以上のチームを誰かが誕生させなければならないなと。なかなか0から1を作るのは難しいことで、誰かがやってくれるのを待っていたら何年も停滞してしまいます。今、女子野球は高校生が甲子園で試合をしたり、NPBの球団が誕生したりといい流れはきているので、その勢いを止めないように一気にいきたいという思いもありました。
九州ハニーズとしては1年間とりあえず乗り切れてホッとしています。1月1日にチームの立ち上げを発表して、今年は人数が集まらずに大会に参加できなくても仕方がないと話していたので、13人というメンバーが集まり、大会に参加することができ、そしてクラブ選手権では準優勝という結果を残せたことは良かったと思っています。
ーー昨年まで活動していた関東と九州で何か差を感じた部分はありましたか?
地域的な差として1番感じたのは九州はソフトボールが盛んだということです。「男子が野球で女子がソフトボール」という考え方は昔からありますが、九州では特にその感覚が強いのかなと。ハニーズも九州出身でソフトボール出身の選手は多いです。その中で、すんなりと女子硬式野球に移行していくということはなかなか難しいと感じています。
ただその中で、日南学園高校は6月までソフトボールをやってから夏の選手権大会に向けて野球もやるというような二刀流の活動をしていて、今年の夏は熊本国府高校も同じような形で選手権大会に参加していました。このような形もありなのかなと。もう1つの競技にこだわる必要はないですし、やりたい競技をやりたい時期にやればいいと思っています。
現在の野球界はピラミッド型の目指すべきゴールが1つという形になっていますが、女子野球選手が目指すゴールはいくつもあっていいのかなと。そしてその過程もあみだくじのように、軟式や硬式、ソフトボールをやったりと人によって様々でいいのではないかと思います。

ーー九州地区として、ハニーズとして今後行っていきたい取り組みはどのようなことですか?
やりたいことはまだまだたくさんあり、その第0.1歩を踏み出したのが今年だと思っています。女子野球界全体で見てもスタートラインの扉は開きましたが、まだその先に踏み出すことができていない方々もたくさんいると感じています。各地でリーグ戦がスタートはし、一見すると普及していると思いますが、女子野球の関係者しか見にこない全国大会の決勝は悲しすぎます。
ハニーズとして九州の女子野球を盛り上げていくために、まず来年は福岡にトップレベルのチームを呼んでローカル大会のような形で試合を行いたいです。九州の人たちに生でトップの試合を見てもらいたいなと。
そして、ゆくゆくは九州全県でクラブチームとそのユースチームも誕生させたいです。その最初の段階として、今年6月にはボーイズやヤングなどに所属する女子選手を集めて、“チーム川端”と“チーム楢岡”という形でペイペイドームで試合を行いました。来年はボーイズから1チーム、ヤングから1チーム、ポニーから1チームというようにチーム数を増やしてできたらと考えています。チームの監督・コーチはハニーズの選手が務め、できれば審判も女性にやってもらって、グラウンドの中には女性しかいないという大会ができたらなと。
また、これは本当に僕の勝手なプランなのですが、九州リーグに所属するチームから20人程度選抜し、その選抜チームをソフトバンクの女子チームという形にしたいという考えもあります。こうすることにより、熊本でも鹿児島でもクラブチームに所属さえすれば、いつでもホークスのユニフォームを着るチャンスがあるという凄く夢がある形にできると思います。
まだまだやりたいことだらけなので、来年はその内の1つでも実現できれば間違いなく女子野球界にとってプラスだと思います。目指すものは高ければ高いほどやりがいもあるので、元々野球熱が高い九州の地で、選手が頑張りたいと思える環境を作っていきたいです。
〈インタビュアー:megaphone編集長・小石涼〉