
横浜隼人高校監督 田村知佳
ーー今年の関東の女子野球はどんな1年でしたか?
今年はヴィーナスリーグのクラブ、大学のリーグを「日本一を目指すチームのリーグ」と「楽しむ野球をやるチームのリーグ」の2つに分けました。当初はどうなるのかなと思っていましたが、結果としては良かったのかなと感じています。
日本一を目指すからには平日も勉強や仕事をしながら練習をしたり身体のメンテナンスもしな ければいけません。でも野球をやる環境として、週末に集まってみんなで野球をしようという場があってもいいんだなと改めて感じさせてもらったような気がしました。例えば高校時代に出場機会のなかった選手も試合にも出られるチャンスが生まれてきます。
試合もベンチの雰囲気が明るかったり、女子野球の良さがより見えるなと思うところもありました。今後の女子野球界を盛り上げていくのは、もしかしたらこうしたチームなのかなとも感じた年でした。

ーー横浜隼人高校は甲子園で行われた決勝戦を制し日本一になりましたが、どのような反響がありましたか?
5年前に選手権で準優勝した時とは全く反響が違うものでした。今年は甲子園球場で決勝戦&選手権優勝ということで反響は思った以上でした。TVのニュース番組に取り上げてもらえたり、メディア露出も多かったことが大きいですが、日本の野球文化・高校野球文化を強く感じました。
今回女子野球を注目してもらったことで、「女子ってこういう感じで試合をしているんだ」と女子野球の明るさ・元気の良さや横浜隼人のチームカラーを知ってもらうことができて良かったと思っています。
そして、色々な人と話す中で「この大会は26回もやっていたんだ」ということも言われました。認知度も低く、注目されることのなかった女子野球が今回の大会でたくさんの方に見てもらえたことを考えると改めて甲子園という場所の凄さを感じました。
ーー関東と他地域でどのようなところに差を感じていますか?
高校生も関東外に進学する中学生も多くいますが、やはり関東は寮がない、グラウンドがないことが選手が選択する上で難しいことなのかなと。リーグとしては関東の方がチーム数も多くて試合数も多いので、大会の部分では良い環境が整っていると思います。
ありがたいことに横浜隼人は毎年同じくらいの人数が入学してくれていますが、毎年、新規の学校も増えているので自然と選手はバラけていきます。伝統ある学校が大会参加するための選手数を安定して集めることの難しさも感じています。
ーー今後、関東の高校女子野球はどのように変わっていくと思いますか?
各地区の選手が、地元の高校に進学する傾向がより強くなっていくと感じます。男子の高校野球でもそうですが、力のある選手は全国各地から声をかけられて、県外に出ていくこともあります。
でも選手達が「地元に残って野球したい!」と思えるくらい関東圏内で学校数が増えて、魅力ある環境にならなければと思います。私立だけではなくて公立でも増えていけばより良いなと。そうすることで今まで野球をやめてしまっていた子が続けるきっかけになっていきます。
地元の高校で野球を続けていれば親御さんもいつでも応援にいけますし、そんな応援が力になるはずです。そうやって地元に残る選択肢が魅力的になっていけば、関東の高校女子野球はもっと盛り上がっていくのかなと思います。

〈インタビュアー:megaphone編集長・小石涼〉