

今年から開催時期を10月に変更し、高校・大学・クラブ各カテゴリーの全国大会で優秀な成績を残したチームの参加となった全日本選手権。名実ともに『女子硬式野球日本一』を決める大会となった今大会は決勝戦でのタイブレークを制したエイジェックが大会連覇の偉業を成し遂げ幕を閉じた。
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エイジェックが大会連覇を達成 2022年全日本選手権大会結果
優勝:エイジェック
エイジェックが大会連覇の偉業を成し遂げた。昨年は全日本選手権・クラブ選手権の全国2大会を制すも先日のクラブ選手権では準々決勝敗退と辛酸をなめる結果に。昨年の優勝メンバーが多く在籍する九州ハニーズ、クラブ選手権で敗れた埼玉西武LLと因縁的な相手を破り決勝戦に駒を進めると、決勝戦ではタイブレークにもつれる熱戦を制した。大会MVPは正捕手を務め投手を牽引し、準決勝での2打点を含め打撃でも貢献した塩谷千晶選手が受賞。
【エイジェック 優勝までの勝ち上がり】
1回戦:8-2 横浜隼人高校
2回戦:8-1 大阪体育大学(6回コールド)
3回戦:2-1 九州ハニーズ
準決勝:4-0 埼玉西武ライオンズ・レディース
決勝戦:6-5 神戸弘陵学園高校(延長8回タイブレーク)

準優勝:神戸弘陵学園高校
神戸弘陵学園高校が3度のタイブレークを戦い抜き、大学・クラブ相手に準優勝という好成績を収めた。エイジェックが大会連覇の偉業を成し遂げた。昨年秋のユース大会優勝、春の選抜大会準優勝と2大会連続で結果を残していた現在の3年生の代だが、夏の選手権大会ではコロナの影響で無念の途中棄権。今大会はその3年生の最後の大会として挑み、年上のチームを相手に熱戦を繰り広げた。優秀選手賞は準決勝でタイブレーク4イニングを含む11イニングを投げ抜き勝利投手となった日髙結衣が受賞。
【神戸弘陵学園高校 準優勝までの勝ち上がり】
1回戦:8-1 ハナマウイ(6回コールド)
2回戦:6-4 平成国際大学(延長9回タイブレーク)
3回戦:4-0 ゴールドジム
準決勝:3-2 阪神タイガースWomen(延長11回タイブレーク)
決勝戦:●5-6 エイジェック(延長8回タイブレーク)

準優勝の神戸弘陵を筆頭に高校生の躍進も目立った今大会 カテゴリー別にみる勝敗数
準優勝の神戸弘陵学園高校の躍進を始め、高校勢の活躍も目立った今大会。ここで、カテゴリー別の成績を比較してみる。
昨年(2021年)大会カテゴリー別成績
出場 | 勝 | 敗 | ベスト16 | ベスト8 | ベスト4 | |
クラブ | 20 | 15勝 | 19敗 | 7 | 5 | 3 |
大学 | 6 | 7勝 | 5敗 | 3 | 2 | 1 |
高校 | 6 | 7勝 | 6敗 | 5 | 1 | 0 |
今回(2022年)大会カテゴリー別成績
出場 | 勝 | 敗 | ベスト16 | ベスト8 | ベスト4 | |
クラブ | 14 | 17勝 | 13敗 | 8 | 6 | 3 |
大学 | 6 | 3勝 | 6敗 | 5 | 0 | 0 |
高校 | 8 | 7勝 | 8敗 | 3 | 2 | 1 |
高校勢は1回戦の結果のみを見ると昨年以上の成績を残すことはできていないが、昨年大会では一つの壁となっていた2回戦を履正社・神戸弘陵の2校が突破。一方で前回大会までの好成績を残し続けていた大学勢は今大会では2回戦で全チームが敗退という結果になった。
好成績を残した神戸弘陵・履正社は共に夏の選手権大会はコロナの影響で不完全燃焼で終えることとなったチーム(神戸弘陵は途中棄権、履正社は主将・副主将を始め数名の選手が欠場)。選手個人の能力の高さやチーム力の高さはもちろん、“高校最後の大会”となる今大会にかける思いの強さを感じさせる戦いぶりでした。
編集長個人的ベストゲーム:はつかいちサンブレイズ vs 履正社高校
今大会は大会2日目までのマドンナスタジアムでの全試合、準々決勝以降の全試合の計17試合を現地観戦しました。その中では2回戦のはつかいちサンブレイズ vs 履正社高校の一戦が個人的に印象に残る一戦でした。延長11回にまでもつれる熱戦となった神戸弘陵学園高校 vs 阪神タイガースWomenの準決勝も印象に残りましたが、試合詳細をすでにあげているため、ここではこの一戦を選びました。神戸弘陵 vs 阪神TWの試合詳細はこちら

女子プロ野球界のレジェンドでギネス記録も持つ岩谷美里が選手兼任監督として今季から始動したはつかいちサンブレイズと夏の高校選手権を主将・副主将がコロナで欠場し今大会にかける思いは強い履正社高校との一戦。
試合は初回から元女子プロ野球選手も多く在籍するサンブレイズ打線が履正社の2年生バッテリーを攻め一挙3得点。序盤から追う展開となった履正社は代わった串有菜と小谷凜の3年生バッテリーがサンブレイズ打線を封じ込めると、3回・5回・6回に1点ずつ返し遂に同点に追いつく。

追いつかれたサンブレイズ打線も最終回に意地を見せる。代打で出場した和田茉由乃の安打を皮切りに相手のエラーがらみで1点を勝ち越すと、日本代表候補の村松珠希にタイムリーが飛び出し、土壇場で2点のリードを奪う。
これで決まりかと思われたが7回裏に再び逆転劇が起こる。履正社は先頭の真弓心、若生彩杏の連打でチャンスを作り、1年生の3番西本夢生の二塁打で同点に追いつくと最後は2年生の6番橋本七海がスクイズを決めてサヨナラ勝ち。
履正社・橘田恵監督が「1年生、2年生、3年生みんなが活躍している」と話す通り、ピンチの場面で登板して切り抜けた3年生投手の串や大向真央の好投や最終回に3年生のランナーを後輩たちが返した姿など、選手たちが一体となって戦う姿がベンチの雰囲気からも伝わってきて感動的な試合でした。

一方のはつかいちサンブレイズからは最終回に勝ち越しに成功するなど、『高校生には負けられない』という意地が感じられ、試合後の岩谷監督の「悔しいというよりも、なんでかな?という感じです」と言葉を詰まらせたことも印象的でした。女子野球タウン・廿日市を拠点に今季から活動をスタートしたサンブレイズ。クラブ選手権・全日本選手権と試合最終盤での逆転での敗戦を喫し、1年目は悔しい結果に終わったが、試合終了後のチームの雰囲気や岩谷監督の言葉の節々から来季以降のさらなるパワーアップを期待させるものを感じました。この敗戦をきっかけに、チームがより強くなっていくことではないでしょうか。
今季主要大会はこれにて終了 地方大会・来季以降の盛り上がりにも期待
2022年女子野球主要大会結果
大会 | 優勝 | 準優勝 |
高校選抜大会(春) | 福井工大福井高校 | 神戸弘陵学園高校 |
高校選手権大会(夏) | 横浜隼人高校 | 開志学園高校 |
高校ユース大会(秋) | 神戸弘陵学園高校 | 花巻東高校 |
大学選手権(春) | 尚美学園大学 | 日本大学国際関係学部 |
大学選手権(秋) | 尚美学園大学 | 平成国際大学 |
クラブ選手権 | 阪神タイガースWomen | 九州ハニーズ |
全日本選手権 | エイジェック | 神戸弘陵学園高校 |
全日本選手権はエイジェックが大会連覇の偉業を成し遂げ幕を閉じた。これにて2022年の女子野球は主要の全国大会を終えた。今シーズンはこの後、ヴィーナスリーグ決勝トーナメントや西日本大会といった地方大会、高校女子野球vsイチローや東西対抗戦といったイベントゲームなどを残している。また、開催が延期されていた女子野球アジアカップも開催される予定(詳細時期は未定)。
2022年の女子野球は残りわずかとなったものの、まだまだ注目が集まる大会やイベントが残る。ここまで熱戦を繰り広げてきた選手たちのさらなる激戦が期待されます。また、年々盛り上がりが増している女子野球。来年以降の盛り上がりにも期待です!!