
10月8日に開幕し、全4日間の日程を終えた全日本選手権。大会最終日、準決勝・決勝3試合の模様をお届けします。

Contents
大会4日目(10月11日)全試合結果
準決勝 第1試合:阪神タイガースWomen vs 神戸弘陵学園高校

4回にも及ぶタイブレークを含め、11イニングをエース・日髙結衣が1人で投げ抜き、神戸弘陵学園高校がクラブ選手権優勝の阪神TWに勝利した。
2回戦・3回戦を1.2年生に先発投手を任せ勝ち上がってきた神戸弘陵は、この試合を3年生のエース・日髙に託す。一方の阪神TWは先日のクラブ選手権で完全試合を達成した石村奈々が先発。試合は両投手による緊迫した投手戦となり、0-0のまま7回の攻防を終え、タイブレークに突入する。両投手は無死一二塁から始まるタイブレークでも怯むことなく、1イニング目となる8回を両投手がそれぞれ0点に抑える。

タイブレーク2イニング目となる9回、先攻の神戸弘陵は、送りバントで1死二三塁のチャンスを作ると、5番國富瑞穂がスクイズを決め、待望の先制点をものにする。さらに2死三塁から捕手としてここまで好投の日髙を牽引した安藤蓮姫にタイムリーが飛び出し2得点目を挙げる。
2点を追う展開となった阪神TWはその裏、送りバントと内野ゴロの間に1点を返すと、2死三塁から主将の三浦伊織が低めのチェンジアップを拾う技ありのヒットで走者が生還。土壇場で再び同点に追いつく。

阪神は続く10回表に3番手の坂東瑞紀が登板し、捕手からの牽制刺とダブルプレーで打者1人で3アウトを奪うと、その裏に送りバントと申告敬遠で1死満塁の絶好機を作るも、神戸弘陵の日髙は連続三振を奪いこのピンチを切り抜ける。
絶対的なピンチを脱した神戸弘陵は11回表の攻撃で送りバントとスクイズで再びリードを奪うと、裏の守りではバントの三塁封殺とダブルプレーで3アウトを奪う。タイブレーク4イニングという類稀なる白熱の投手戦を好守で締め括った。

神戸弘陵学園高校・石原康司監督
「ミスはありましたが、それよりも最後まで諦めず戦ってくれたのが良かったなと。嬉しいです。日髙がタイブレークでピンチのところで三振を取ったり抑えたりしたので。夏の選手権はコロナで途中棄権で、その気持ちを今出してくれているので、保護者の方もみんな喜んでくれていると思います。」
神戸弘陵学園高校・日髙結衣投手
「今までの中で1番ドキドキした試合で、誰もどうなるか分からない展開でしたが、全員で楽しめたことがすごく良かったかなと思います。年上の相手ですが、同じ女子ということで向かっていく気持ちを忘れずに臨みました。今日は序盤を球数を少なく投げれたので、それがロングイニングを投げ抜くことに繋がりました。疲れは感じずに投げ切ることができました。嬉しいの一言です。」
神戸弘陵学園高校・森田凜々選手
「序盤からチャンスは作れていたのですが、そこで1本が出ずに、相手は年上だったので苦しい場面はすごくありました。日髙がすごく頑張ってくれていたので、『日髙のために』という声もベンチ内では多くありました。(決勝点となったスクイズについて、)打ってやろうという気持ちはありましたが、監督さんが出してくれたサインを信じてやりました。」
阪神タイガースWomen・三浦伊織主将
「やっぱり悔しいですね。クラブ選手権で優勝して挑んだ大会だったので、ここで負けてはいけないなと思っていたのですが...タイブレークになる前に一点取れていればなと思いました。(完投の日髙投手について、)チャンスは1回しかないと思っていたので、7回までで1本出せていれば良かったのですが、私も3打席凡退していたので、凄く苦戦しました。(タイブレークでの同点適時打について、)意外と冷静に『次は打たなきゃ』と打席に集中はできたので、同点になるヒットになったことは良かったです。4回もタイブレークができたことはチームとしては次に繋がるんじゃないかなと思います。」
準決勝 第2試合:エイジェック vs 埼玉西武ライオンズ・レディース

昨年大会覇者のエイジェックが埼玉西武LLを相手に快勝。大会連覇に向けて2年連続で決勝戦へ駒を進めた。
試合は序盤からエイジェックが主導権を握る。1回表の守りで2死一二塁のピンチを切り抜けたその裏の攻撃。2死から3番安達瑠の四球、4番辻野玲奈の三塁を強襲する当たり(記録はエラー)でチャンスを作ると、5番磯部舞弥のタイムリーで1点を先制する。
エイジェックはその後4回に8番塩谷千晶が2点タイムリーとなる二塁打、5回にも5番磯部に2本目のタイムリーが飛び出し合計4得点。投げては先発・竹村理が西武LL打線を4安打に封じ込める好投で7回を完封勝利。逃げ切り勝ちで決勝戦への切符を手に入れた。

敗れた西武LLは1-3回戦でそれぞれ先発勝利した清水美佑・山田優理・里綾実の継投で臨むも、エイジェック打線に効果的な場面でタイムリーを打たれ4失点。打線は7回中6回走者を出しチャンスを作るもあと一本を出すことができなかった。

エイジェック・小林茂生監督
「(完封の竹村投手について、)ナイスピッチングの一言です。ちょっと不安定なところはあったのですが、任せて1人でいかせました。うちは点を与えない野球で、少ないチャンスをものにする野球なので、それができていると思います。いつもは最初だけ取ってズルズルいってしまうのですが、今日は中押し・ダメ押しで取れて4点差があったので、少し安心して見てられました。」
エイジェック・竹村理投手
「バックに任せているので、打たせてとるという思いで投げていました。守備のいい守りに助けられた部分も大きかったです。(決勝戦の神戸弘陵戦について、)相手が高校生なので、負けられないです。絶対に勝ちたいと思います。」
決勝戦:神戸弘陵学園高校 vs エイジェック

エイジェックが土壇場での同点劇を含め最後まで粘り強い戦いを見せた神戸弘陵学園高校をタイブレークで振り切り、大会2連覇を成し遂げた。
準決勝2試合の後に行われた決勝戦の試合序盤はエイジェックが完全に主導権を握る。エイジェックは初回、先頭の阿部希が四球で出塁しチャンスを作ると、4番辻野玲奈、5番磯部舞弥、7番斎藤さやかにタイムリーが飛び出し、一気に4点を先制する。

神戸弘陵は1回裏に1点を返すも3回にも1点を失い、6回表を終えて5-1とリードを許す。4点を追う6回裏、代打で出場した3年生の松浦咲花の出塁を皮切りに無死満塁のチャンスを作り、5番國富瑞穂の二ゴロの間に1点を返すと、6番安藤蓮姫、8番田野井惇に適時二塁打が飛び出し、この回一挙4得点。試合終盤の集中打で同点に追いつく。

試合はその後タイブレークに突入。先攻のエイジェックは送りバントで手堅く1死二三塁のチャンスを作ると、1番阿部希の犠牲フライで1点を勝ち越す。エイジェックはリードを奪った8回裏、6回途中からリリーフで登板した小松圭保がバントもさせない気迫の投球で先頭打者を三振に奪うと、最後は主将の辻野玲奈がサードゴロを捌き3アウト。タイブレークにもつれる熱戦を制し、全日本選手権2連覇の偉業を成し遂げた。

エイジェック・小林茂生監督
「タイブレークは日頃からOP戦などで練習していたので準備はしていました。(同点に追いつかれた場面について、)普段から失点になるケースはフォアボール・エラーが絡むと話していて、エラーはしたくてする人はいないので、ピッチャー・野手で頑張って守って0に抑えるということがチームワークだと思っているので、4点取られたことは反省していかないといけないかなと思います。大会前に気が抜けているように見えたのでミーティングで一喝したのですが、この場を借りてお詫びしたいと思います。『お前たち凄い。みんな凄い。』と。」
エイジェック・辻野玲奈主将
「素直に嬉しいです。(去年は2チーム優勝だったので、)優勝という感じがしなかったので、今年は痺れる展開でドキドキしましたが、楽しんで最後できたので良かったです。(主将として臨んだ今大会について、)みんな思っている気持ちは一緒なので、キャプテンとしてとかではなく、みんな一緒なのかなと。このチームで勝ちたいという気持ちが強くて、みんなで意見も言い合って団結できました。優勝したことによって打倒エイジェックでくるチームも増えてくると思うので、自分たちも負けないように次の大会も勝てるように準備していきたいと思います。」
エイジェック・塩谷千晶選手(大会MVP)
「(決勝戦の戦いは)めちゃくちゃドキドキしました。打撃はあまり自信がなくて、今まではピッチャーをやってきて、今年は野手に専念ということで普段はみんなに助けられることが多かったので、この大会はチャンスの場面では絶対に返したいと思っていたので、それが結果に繋がって良かったです。」
神戸弘陵学園高校・石原康司監督
「ここまできたので優勝はしたかったですね。もう一歩でひょっとしてというのはありましたけど、やっぱり相手の方が1枚上手だったかなと振り返って思います。(夏の選手権大会はコロナで途中棄権のため、)3年生は夏にグラウンドで引退できなかったので、ここで社会人相手に準優勝できたことは誇りに思って欲しいですし、私の心の中では日本一だと思っております。3年生は本当に最後までよくやったなと。これを自身にして将来に活かして欲しいなと思います。いろんなところで活躍する場面がある子達ばかりなので、また戦うことになると思います。」
今年初めて10月開催となり、高校・大学・クラブの枠組みを超えて28チームが熱戦を繰り広げた全日本選手権はエイジェックの二連覇で幕を閉じた。各カテゴリーの主要大会が終了し、オフシーズンへと突入していく女子野球。残りの各地方大会、来年以降の盛り上がりにも期待です!!